国立国際美術館

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学校団体鑑賞

NPOこめっこ(特定非営利活動法人 手話言語獲得習得支援研究機構)

2023年7月22日(土)

7月22日にNPOこめっこ(※1)から小学生7名とそのご家族5名が来館されました。NPOこめっこは、0歳~未就学のろう・難聴児を中心に、遊びをとおして手話を獲得・習得できるように支援活動を行っているNPO法人で、未就学児とその保護者を対象とした当館のプログラム「ちっちゃなこどもびじゅつあー 〜絵本もいっしょに〜」にご協力いただいています。(※2)今回は、きこえない・きこえにくい小学生が集う場である「もあこめ」に参加している子どもたちと当館に遊びに来てくれました。

展示室で作品を見る前に、美術館スタッフが講堂でこの美術館について簡単に紹介し、作品画像を見ながら、子どもたちとおしゃべりしました。スクリーンに、美術館の外観の写真を映し、「何に見える?」と尋ねると、「たくさんの人が作ったように見える」と答えたり、「(この美術館で)どんな作品が見られると思う?」という質問には「きれいな作品」と答えたり、子どもたちが美術館での活動を楽しみにしてくれていることが伺えました。その後、奈良美智《長い長い長い夜》(1995年)、西山美なコ《『Looking at you』より ローズ》(1997年)、はまぐちさくらこ《きいろいにおいがやってくる》(2009年)の3作品の画像を順番に見ました。奈良作品では、「描くのが難しそう」「あの下駄で歩くのは大変そう」「釣りをしているみたい」「缶蹴りをしているみたい」と次々に発言がありました。次の西山作品では、ある子から「(今までに)見たことがない」という発言があった後は、さほど目立った発言はなかったですが、作品をじっと見つめて、どんな作品か考えている姿が見られました。はまぐち作品では、「天国」「誕生日会」「パーティー」といった、にぎやかな雰囲気を感じ取ったような言葉がたくさん出てきました。

スライドトークを終え、美術館スタッフから展示室での過ごし方を、こめっこスタッフからお気に入りの作品を後で発表してもらうことを子どもたちに伝えて、展示室に出発しました。

地下2階で開催している「コレクション1 80/90/00/10」展(以下、コレクション展)に入ると、子どもたちが真っ先に向かったのが、展示室の入口からすぐ見える場所に展示されている、村上隆《727 FATMAN LITTLE BOY》(2017年)でした。近づける場所ギリギリまで近づき、作品の全体から細かいところまで一生懸命見ようとしていました。マーク・マンダース《乾いた土の頭部》(2015-16年)では、顔が半分しかないところを見て、一気に想像を広げ、「戦国時代に壊された」と、その子には昔作られたように見えた作品が現在の姿に至るまでの過程に思いを馳せた発言がありました。その後は、各々のペースで鑑賞し、見つけたもの、感じたことを手話と口話を駆使して、大人たちにどんどん伝えていく姿をたくさん見ることができました。本展の最後に展示されている束芋《団断》(2009年)では、横一列に並ぶように腰を下ろして、3面の大きなスクリーンに映し出された映像を食い入るように見ていました。

コレクション展の鑑賞後には、地下3階で開催している「ホーム・スイート・ホーム」展も鑑賞しました。子どもたちはコレクション展とは違った、空間全体を使った作品や、床に並べられた作品を楽しそうに見ていました。

講堂に戻り、コレクション展を振り返るためにスクリーンに映し出された作品画像を見ながら、子どもたちは自分が気に入った作品が映ると手を挙げ、その作品を気に入った理由を発表しました。マイク・ケリー《シティ3-4(「カンドール」シリーズより)》(2007-09年)を選んだ子は、選んだ理由を「色がきれい。おいしそう」と話し、ヤノベケンジ《アトムカー(黒)》(1998年)を選んだ子は「羽が出てきて飛びそう」と話していました。束芋作品を選んだ子は、「女の子が溺れていた」と気がついたこと、「怖すぎる」と感じたことに続いて、家の中の様子から「昔の家。戦争の時かな」と想像を膨らませて思ったことも話してくれました。鑑賞前にこめっこスタッフから今回は1人1作品選ぶように伝えていましたが、多くの子が気になった作品が2点以上あったようで、複数の作品に手を挙げ、その理由を発表していました。

後日、引率したこめっこスタッフにお話を聞くと、予想していたよりも子どもたちが作品をよく見ていたようだった、たくさん刺激を受けたようだと、話してくださいました。美術館に来ること自体が初めてという子が多かった中、たくさんの作品に出会い、さまざまなことを感じ取ってもらえたようで嬉しいです。

ご来館してくださったみなさん、ありがとうございました。ぜひまた遊びに来てください![F.A]

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