国立国際美術館

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島敦彦国立国際美術館長  島 敦彦

 新型コロナウイルス感染症に代わり、ウクライナやガザでの戦争、年明け早々の能登半島地震など、新たな災禍や難題が次々と上書きされる不穏な日々が続いています。美術館活動もこうした状況と無縁ではなく、また作り手たちの制作や行動にも少なからぬ影響を与える一方、今私たちにできることは何なのか、容易に判断できない場合もある中で、直面する課題に真摯に向き合い、ポジティブな展望を開いていかねばなりません。
 国立国際美術館は、2004年秋に大阪・中之島に新築移転して今年で20年となります。1977年の開館から数えると間もなく50年、独立行政法人国立美術館の中で、第二次大戦後の国内外の現代美術を最も主導的に紹介し、収蔵してきた美術館として、半世紀に及ぶこれまでの活動を総括し、新たな時代を構築する時機が到来しています。
 今年度の展覧会については、前年度から引き続き特別展「古代メキシコ-マヤ、アステカ、テオティワカン」を5月6日まで開催しました。6月4日から10月6日までは「梅津庸一 クリスタレスパレス」、11月2日から2025年1月26日までは「線表現の可能性」、2月15日から6月1日までは「フェリックス・ゴンザレス=トレス」を予定しています。
 梅津庸一は、1982年生まれで、絵画、映像、ドローイング、陶芸、版画など多岐にわたる分野で作品制作に取り組む一方、パープルームと名付けた私塾を運営、またテキスト執筆やシンポジウムの開催、展覧会の企画など活躍の幅を広げ、批評性に満ちた活動で知られる気鋭の美術家です。「線表現の可能性」では、コレクションを中心に線表現の概念を幅広い視点から見直し、線表現の持つ繊細な表情と同時に大胆で果敢な側面に着目して国内外の作家を紹介します。フェリックス・ゴンザレス=トレス(1957-1996)は、キューバに生まれ、プエルトリコで美術を学び、その後ニューヨークを拠点に活躍、エイズで早逝した作家で、日本では初めての個展となります。電球が連なる紐、積み重ねられた印刷物など日常的な素材を用いて、シンプルでミニマルなインスタレーションを展開、展示室に置かれたキャンディを持ち帰るなど観客が参加することで成立する作品もあります。
 年度当初に発生したB2階展示室の漏水のために、5月6日まで開催予定であったコレクション展「コレクション2 身体———身体」は会期途中での中止を余儀なくされました。幸い作品に被害はなく、コレクション展は11月2日から再開する予定です。近年の新収蔵作品を軸に、さまざまな切り口でコレクションをご紹介します。
 教育普及事業については、キッズルーム、パブリックスペース、恒久設置作品展示フロアも活用して、工夫を凝らしたプログラムを開催していきます。また、昨年度から始まった、親子連れのみなさんが他の来場者に気兼ねせずに鑑賞できるファミリー・デーを年に何回か設定します。小さなお子さんが泣いてもぐずっても構わず、展示室で親子が自由に会話しながら作品を楽しめる、そんな時間を確保します。
 今年度も、国立国際美術館に是非足をお運びくださいますよう、よろしくお願いします。

2024年5月

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