国立国際美術館

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先生のためのプログラム

日本私立小学校連合会全国教員夏季研修会

2023年8月22日(火)

8月22日に、全国から私立小学校の先生38名が来館され、スタッフが当館のスクールプログラムを中心に、以下の内容をお話ししました。

まずは美術館の様々なプログラムを紹介し、対象者に合わせた内容を考える重要性についてお話ししました。スクールプログラムでも、どのような学びや経験、時間を子どもたちにもたらしたいのかを考え、対象・目標によって内容を決めていくことを重要なポイントとしています。来館が決まると、打ち合わせの日程を調整し、打ち合わせでは、対象の子どもたちとねらいに応じた活動内容を考えるために、子どもたちの普段の様子から学習状況等を時間が許す限り丁寧に聞き取ります。日常的に子どもたちと接している先生から、発達段階や学級での様子、鑑賞経験の度合い、これまでの学習状況や学習課題等を聞いておくことで、当日の鑑賞につなげています。

多くの先生から「本物の作品を見る体験をさせてあげたい」「美術館という場所を知ってほしい」というご要望をいただきます。この他にも、作品鑑賞を楽しむこと、観察力、想像力、思考力等の鑑賞を通じて得られる力を伸ばすこと、作品や他者、自分との対話を通して自ら意味を生成する創造的な鑑賞を促すこと等、様々なねらいについてお話しくださる先生が多いですが、そのねらいが来館する子どもたちの実態に応じて適切であるか、入念に検討することも大切です。

打ち合わせでお話しくださった目標や子どもたちの現状を踏まえて、当館では、オリエンテーションで使用するスライドは学校ごとに作成します。当日の活動内容は、オリエンテーションの他にも、作品の観察からスタートして創造的な鑑賞を促す鑑賞サポートツール『アクティヴィティ・ブック』(※)を活用した鑑賞や、人数と時間が許す限り、子どもたちの気づき、考えをつむいでいく対話による鑑賞の時間等も含まれます。

ここで、鑑賞学習を考えるにあたって今後先生に参考にしていただくために、スクールプログラムに限らず、子どもたちとの鑑賞を深めるためのいくつかのポイントについて触れました。例えばギャラリー・トークで作品を見た時、スタッフから子どもたちへの最初の投げかけでは、「絵の中では何が起こっているのか」「一番最初に気づいたこと」「一番最初に気になったこと」等、子どもたちが客観的に作品を見ていけるような質問をします。その質問に答えようとして、子どもたちは作品を隅々まで見ながら、自分たちなりに思ったことや、見つけたことを話し始めます。もちろん、作品を見た時にすぐに感じることは多々ありますが、ここでは、できるだけ、客観的事実(何がどうなっているか)と主観(それを見てどう思ったか)を分けて話してもらうようにします。感想をメインにした質問をしてしまうと、作品をしっかり見ずに話すことになったり、その作品に興味を持てない子にとっては何も話すことはないと発言がなくなってしまうので、どの子でも見つけられるものがある、話すことがあると言う状況を作って会話を進めることが重要です。じっくり見て話しをしたり、お友達が話していることを聞いて改めて作品を見直したりしているうちに、みんなで見ているからこそ気づけることがあったり、同じ作品を見ていても、全く違う見方、感じ方があることも実感として持てるようになります。

その後の質疑応答では、参加した先生から「対話による鑑賞をしていても、解説文を読むと答えがあるように思えてしまう」といった悩みもお話しくださいました。スタッフからは、情報を入れるタイミングは目的や子どもに応じて変えていく必要があるが、子どもたちが作品を十分に見て、考える時間が取れていれば、情報が入ってもそれを糧にしてさらに作品鑑賞を深めることができると伝えました。他にも日常的にアート・カードを授業に組み込むことで、子どもたちが積極的に自らの意見を言える雰囲気づくりをしている等、先生間で授業の工夫を意見共有される場面もありました。

レクチャー終了後は、地下2階で開催されている「コレクション1 80/90/00/10」展、地下3階で開催されている「ホーム・スイート・ホーム」展を自由に鑑賞しました。一度全体を見た作品も、再度近づいて観察したり、映像作品をじっくり鑑賞する等、どの先生も熱心に見てくださっていました。

今回の研修を参考に、今後の美術館活用につなげていただければ嬉しいです。お近くの学校の先生は、次回ぜひ子どもたちと一緒にお越しください。ご来館を心よりお待ちしております。[S.S]

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