9月7日に大阪市立加賀屋東小学校の5年生65名が来館されました。
展示室に行く前に地下1階の講堂で行うオリエンテーションでは、美術館の建物や成り立ちを紹介した後、開催している2つの展覧会の概要を話しました。そして、展示作品の中から、奈良美智《長い長い長い夜》(1995年)を例に、感じたこと、思ったこと、考えたことを手始めに、その考えなどがどこから来るのか(理由)を探しながら、作品をよく見てみることを鑑賞の楽しみ方として紹介しました。
また、展示室で取り組む鑑賞サポートツール『アクティヴィティ・ブック』(※)の使い方も説明しました。今回全員が取り組んだ「14 賞状」は、展示されている作品の中から気になる作品を1点選び、自分がどうしてその作品を選んだのか、作品の特徴をよく見ながら理由を考えて、作品にあげたい賞の名前と、賞状の本文を書くアクティヴィティです。このアクティヴィティ終了後も、時間に余裕がある子は他のアクティヴィティにも取り組むことを伝えました。
オリエンテーションが終わると、地下2階と地下3階に分かれて、それぞれ自由鑑賞を開始しました。地下3階で開催している「ホーム・スイート・ホーム」展から見始めたグループは、まず展示室を一周してから、気になった作品のところに戻る様子がたくさん見られました。潘逸舟《ほうれん草たちが日本語で夢を見た日》(2020年)を「ダンボール箱の街みたい」と気に入った子は、作品のタイトルを見に行き、「日本語」という言葉に注目し、「ほうれん草たちは外国から来たのかな?」と、作品を読み解こうとしていました。鎌田友介《Japanese House(North Korea/South Korea)》(2023年)の前で『アクティヴィティ・ブック』に取り組んでいた子は、空爆によって建物が破壊されている写真を見て、この作品が気になった理由を「家と一緒に、家の中にいる人の気持ちも爆発しているように感じた」と教えてくれました。「それはどんな気持ち?」と聞くと、「悲しい、悔しい」と写真には現れていない人たちの気持ちを作品から感じ取っていました。
地下2階で開催している「コレクション1 80/90/00/10」展でも、子どもたちはどんどん展示室を進んで行き、自分が気になる作品を探していました。中には自分が気になった作品を「あれ見て!」と近くにいる友達に教えている姿もありました。束芋《団断》(2009年)の映像には多くの子どもたちがくぎ付けになり、冷蔵庫に人が入っていったり、洗濯機から人が出て来たりと、次々と起こる、現実ではありえなさそうな出来事に「どういうこと?どういうこと?」と不思議そうにしていました。トーマス・シュトゥルート《渋谷交差点、東京》(1991年)の前で『アクティヴィティ・ブック』の「07 気になるもの」に取り組んでいた子が2人いました。このアクティヴィティは、展示されている作品の中から、自分が気になった作品を1点選び、作品をじっくりと見てスケッチし、自分がその作品がどうして気になったのか理由を考えて書くというものです。1人は街中にあふれる看板の文字や絵が気になったようで、映画館の看板の絵をスケッチしていました。また、ビルの電光掲示板に映し出されている「19℃」に注目し、「季節はいつかな?」と写真が撮られた季節について想像を巡らせていました。もう1人はビルの形状が気になったようで、建物の高さがバラバラでデコボコしている街全体をスケッチしていました。この様子から、同じ作品を見ていても、見る人によって注目している点が違うということを垣間見ることができました。2人がその後、お互いのスケッチを見せ合った時にも、描いている内容が全然違うことに驚いたかもしれません。
自由鑑賞の時間は約1時間でしたが、地下2階と地下3階の展示室だけではなく、地下1階に常設展示されている彫刻作品を鑑賞している子どもの姿も多くあり、美術館全体を楽しんでいました。多くの子どもたちは集合時間ギリギリまで展示室で作品を見ていましたが、中には集合時間よりも早めに講堂に戻ってきて、『アクティヴィティ・ブック』に熱心に書き込み、完成させようとしている子もいました。戻ってきた子たちはとても元気で、自分が完成させた賞状を友達同士で見せ合っている様子も見られました。
最後には全員で今日の活動を振り返りました。「どんな作品があった?」という質問には、「壁にバラがあったり、足が生えていた!」と、見つけた作品を次々に答えてくれました。「感想を教えてくれる子はいるかな?」と聞くと、何人も一斉に手を挙げてくれました。その中の1人からは「美術館にある絵は自分が作るのとは違うけど、じっと見ていると意味がわかって面白かった」という発言があり、ただ作品を眺めるだけではなく、どんな作品なのか考えながらよく見てくれていたということが伝わってきました。
初めて美術館に来たという子も多かった中、ほとんどの子どもたちが美術館で作品を見たことを楽しいと感じてくれたようでした。今日の活動をきっかけに、今回配布した『アクティヴィティ・ブック』を持って、ぜひいろいろな美術作品に出会いに出かけてもらえると嬉しいです。
大阪市立加賀屋小学校のみなさん、ご来館ありがとうございました。またのご来館お待ちしています。[F.A]
※『アクティヴィティ・ブック』に関する詳細はこちらから



