会期:1989年11月2日~11月26日
彫刻や立体作品は物理的な量として一定の空間を占有する。他方、空間に場所を占めはするが、暫定的で仮説的な配慮や架構などによって、空間を励起させ、空間を現出させようとする表現の形式が近年さかんになり、一部に定着しはじめてきた。彫刻の場合のようにある意味内容を持ったものが、空間に存在するのではなく、空間に振動が与えられ、空間の存在が身体的に関知させられる。
今村源と松井智惠はともに京都市立芸術大学でそれぞれ彫刻と染織を学んだが、その後関西を拠点に、個別的な領域にとらわれない新しい活動を続けている。本展は、二人展あるいは二つの個展ではなく、二人の空間が交響しあい、空間を震えさせてくれるものであった。
一定の意味が提示されるわけではなく、空間の中でなにかが生起しうることを予感させる習作的な性格も強く、その意味ではこの「近作展7」は、同時開催の特別展「ドローイングの現在」展に照応し、補完するものであった。