国立国際美術館

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ちっちゃなこどもびじゅつあー

ちっちゃなこどもびじゅつあー 〜絵本もいっしょに〜

2024年9月4日(水)

9月4日に「ちっちゃなこどもびじゅつあー 〜絵本もいっしょに〜」を開催しました。1日に3回実施し、生後6ヶ月から5歳3ヶ月までの子どもとその保護者、計14組32名が参加しました。

前回(※1)と同様に地下1階から地下3階まで館内の色々な場所を巡り、美術館がどのようなところなのかを体験するプログラムを実施しました。今回は、いずれの回も0~1歳児の参加が多かったので、0~1歳児の様子を中心にお伝えします。

冒頭で、絵本の選書、絵本よみ、活動中の参加者のサポートを担当する「美術と絵本を考える会」(※2)のメンバーと美術館スタッフによる自己紹介の後、プログラムの流れを簡単に伝え、絵本よみをしました。今回は、通常の開催と異なり、講堂と比べかなり狭いキッズルームでの絵本よみであったため、読み手と参加者の距離が近く、1冊目の絵本よみでは小さな子どもも落ち着いて絵本をじっと見つめ、時折、笑顔を見せたり、読み手の声に応えるかのように声を発したりする様子も見られました。2冊目の絵本よみになると、3~5歳の子どもは集中して絵本よみを楽しんでいる一方で、0~1歳児の多くはキッズルーム内に配架されている絵本に手を伸ばしたり、ずりばいで移動を始めたりと、なかなか集中することが難しい様子でした。

2点の展示作品画像をパネルに貼って見せた作品紹介では、美術館スタッフと子ども、保護者が簡単な対話をしながら作品を見ました。0~1歳児の多くは、発話は始まっていないもののそれぞれの反応を見せていました。須田悦弘《チューリップ》(2006年)を見せると、0歳6ヶ月、0歳9ヶ月の参加者は、じっとパネルを見つめ、次の作品を見せても《チューリップ》のパネルに近寄り、触っていました。また、0歳7ヶ月の子どもは、作品画像のパネルよりもキッズルームの天井の照明が気になるのか、天井を見つめていました。小さな子どもは、展示室でも作品以外に興味を示すことが多く、照明や他の来館者の動き等を目で追う様子をよく見かけます。

館内を巡る際に3回ともに共通していた点は、歩き始める前の子どもの参加が多かったため、抱っこ紐を使用する参加者が多かったことです。
会場が混雑している場合を除き、当館では展示室でベビーカーを使用することができ、台数に限りはありますが、ベビーカーの貸し出しも行っています。(※3)このプログラムにもベビーカーで参加できますが、作品は大人が立って鑑賞することを前提に展示されているため、ベビーカーに乗っていると見えづらいので、首が座っている子どもの場合には、ベビーカーより前抱きの抱っこ紐での参加をお勧めしています。
抱っこ紐で参加すると、突然走り出す子どもを保護者がなんとかして静止しようとすることもないので、保護者もゆったりと作品を鑑賞できている様子で、プログラム自体ものんびりとした雰囲気のなか進みました。

地下1階レストラン前のデッキからジョアン・ミロ《無垢の笑い》(1969年)を見た際には、抱っこ紐で参加していた0歳8ヶ月と0歳9ヶ月の子が作品を見て足をバタバタと動かしていました。これも小さな子どもによく見られる反応で、言葉で伝えることはできなくても、ある一定の作品の前でのみ足を動かしたり、声を上げたりと、子どもの様子をよく観察していると、0歳児でも作品を見て反応しているということがわかります。地下2階(※4)では、1歳2ヶ月の子が高松次郎《影》(1977年)を見た後、他の作品が展示されている展示室の壁に映った自分の影を見つけて、《影》の方を振り返る姿があり、描かれた影と実際の影を見比べているようでした。

地下3階の「梅津庸一 クリスタルパレス」展(6月4日~10月6日開催、以下、梅津展)では、0歳6ヶ月の子は少し疲れてしまったのか途中で抱っこ紐の中で眠っていました。0~1歳児に限らず、展示室を巡る最中に眠そうな仕草を見せたり、しっかりした足取りで歩いていた子も疲れからか、保護者に抱っこを要求したりする姿もよく見られます。
その一方で、1歳8ヶ月の子は、作品を少し離れた場所から見た後、近づいてもう一度じっくり見るという行動を繰り返しながら作品と向き合い、他の子どもが抱っこを求める中、一度も抱っこを求めず、この年齢とは思えないほどの集中力を発揮していました。そして、梅津展の終盤に展示されている《unknown teller》(2024年、DIAURAとのコラボレーション作品で大きな音量で音楽が流れている映像作品)を瞬き一つせず見つめ、他の作品を見ている時よりもさらに熱心に見入っていました。
また、地下2階ではあまり集中できない様子だった1歳の子は、梅津展で壁のかなり上部に展示されている《女子高生》(2006年)を見上げ、腕をそちらの方に伸ばし、嬉しそうにしていました。このように、地下2階では集中していなかった子どもが、地下3階の作品には全く違う反応を示すことも多く、小さな子どもでも作品をよく見て、作品に対するその子なりの反応の現れなのだなということを実感することができました。

最後のキッズルームでのふりかえりで、美術館スタッフが展示室での子どもの様子を保護者に尋ねると、保護者はすぐにそれぞれのお気に入りと思われる作品について教えてくれました。これは、自分の子どもがどの作品の前でどのような様子だったのか、保護者が子どもの様子をよく観察されているからこそすぐに発言できたことだと感じました。

ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました。途中で眠たくなってしまったり、作品によって集中して見ることができたり、できなかったりしますが、それもこの年齢の参加者ならではの姿です。スタッフ一同、参加者に寄り添いサポートしますので気負うことなく気軽な気持ちで参加してもらえればと思います。またのご来館お待ちしています。 [K.Y]

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2024年9月4日(水) 1)10:30〜11:50 2)13:15〜14:35 3)15:00〜16:20
対象:0歳~未就学の乳幼児とその保護者 定員:各回5組10名
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