7月17日に「ちっちゃなこどもびじゅつあー 〜絵本もいっしょに〜」を開催しました。1日に3回実施し、生後8ヶ月から4歳までの子どもとその保護者、計13組27名が参加しました。3回目は大阪府「こめっこ」プロジェクトのご協力のもと、子どもの
本プログラムは、通常は地下1階の講堂で、「美術と絵本を考える会」(※2)メンバーによる絵本よみ、美術館スタッフによる作品のスライドトークの後に地下2階のコレクション展を鑑賞します。(※3)今回は、講堂とコレクション展が整備、修繕により閉鎖しているため、講堂での絵本よみ、スライドトークに続き、コレクション展をゆっくり鑑賞する美術館体験から、地下1階エントランスロビーに始まり、地下2階の一部、地下3階の展示室など、美術館のいろいろな場所を探検する美術館体験に内容を変更して開催しました。
今回の絵本よみの場所は地下1階のキッズルームです。取り上げる絵本は、鑑賞作品と関連づけて設定される、子どもたちにわかりやすいテーマのもと、「美術と絵本を考える会」メンバーが選書します。今回は「おおきい ちいさい」というテーマで選ばれた絵本2冊を、美術館探検に出発する前に紹介しました。
次に、実際に作品を見る前の準備体操として、1回目と2回目はA3サイズの厚紙に作品画像を印刷したものを使いながら作品紹介しました。マーク・マンダース《乾いた土の頭部》(2015-16年)の画像を見た1歳10ヶ月の子は「おおきい」と発言しました。美術館スタッフが「どこからそう思ったのかな?」と尋ねると、その後に言葉は続きませんでしたが、直感的にこの作品を大きい!と思ったのかもしれません。須田悦弘《チューリップ》(2006年)の画像を見た1歳5ヶ月の子は、チューリップの花びらの色が自分のズボンと同じ色であることに反応し、「あか」と言っていました。
キッズルームを出発し、地下1階のエントランスロビーを巡りました。まず、ジョアン・ミロ《無垢の笑い》(1969年)を見るためにレストラン前のデッキに向かいました。このデッキからは、地下1階から地下2階にかけての吹き抜けを一望することができ、デッキに到着した子どもたちは、ミロ作品だけでなく、須田作品を見つけたり、天井から吊るされているアレクサンダー・コールダー《ロンドン》(1962年)にも興味を示していました。全員で少しトークをした時には、2歳10ヶ月の子はミロ作品を見て「あか」「くろ」と作品の中に見られる色をあげたり、「ねこ」「はなび」と作品を見て思ったことを話していました。
こめっこ回では、絵本よみの後に、ヘンリー・ムア《ナイフ・エッジ》(1961/76年)の前でこめっこスタッフが手話によるトークをしました。本作は、どこから見るかによって受ける印象が大きく変わる作品です。子どもたちに前後左右など、いろいろな場所から見るように促し、作品の後ろに回った2歳1ヶ月の子からは「ちがうねー」と発言がありました。子どもたちが作品に近づきすぎてしまうことがありましたが、こめっこスタッフが機転を利かせ、抱っこして作品の周りを一周したり、作品の上の方まで見えるように抱き上げたりして、子どもたちが楽しく作品を見えるようにしました。
地下1階を巡った後は、地下2階に移動しました。参加者それぞれのペースで近年の収蔵作品2点と恒久設置作品を鑑賞しました。自分で歩きたがり、作品に向かってどんどん進んでいく子や、階段やエスカレーターが気になって近づいていく子と様々でした。
展示室を回っているうちに、それぞれの子なりに興味を持つ作品が見つかることもあり、地下2階の後に移動した地下3階の「梅津庸一 クリスタルパレス」展(6月4日~10月6日開催)では、それまで作品を見ることよりも歩くことに夢中になっていた1歳9ヶ月の子が、通路のような細長い部屋の両側の壁に展示されている版画作品に興味を示して「これなに?」と質問する場面もありました。
美術館探検を終えて、キッズルームに戻り、1回目と2回目はもう1冊絵本よみを、こめっこ回は「おかたづけぱんぱん」という、プログラム終了時に行う手話表現あそびでプログラムを終了しました。
今回はスライドトークを介して作品に徐々に親しんでいく時間がなかったからか、通常の内容と比べると、子ども、保護者ともに一つの作品の前に立ち止まってじっくり見ている様子がいつもよりは少なかったように見受けられました。あらためて、展示室で実際の作品を見る前に、作品を落ち着いて見て、話す時間を持つことの重要さを感じました。その一方で、子どもたちが自由に美術館の様々な場所を探検し、作品を鑑賞できる良さも実感しました。子どもたちとってより良い美術館体験となるように、これからも継続的な検討を重ねながら、プログラムを実施していきます。
ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました。またのご来館お待ちしています。 [F.A]
※1 こめっこ回の紹介動画は、国立国際美術館YouTubeチャンネルから
※2 「美術と絵本を考える会」
当館主催の「ちっちゃなこどもびじゅつあー 〜絵本もいっしょに〜」を実施するために結成された団体。それぞれのご専門を活かしながら、絵本の選書、絵本よみ、活動中の参加者のサポートを担当。メンバーは、内川育子(司書)、内部恵子(朗読家)、土居安子(大阪国際児童文学振興財団理事・総括専門員)、中東ゆうき(詩人)、藤井君代(司書)。
※3 通常のプログラムの流れ、内容についてはこちらから
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2024年7月17日(水) 1)10:30〜11:50 2)13:00〜14:20 3)15:30〜16:45
対象:0歳~未就学の乳幼児とその保護者 定員:各回5組10名
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