国立国際美術館

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学校団体鑑賞

大阪市立敷津小学校

2023年9月1日(金)

9月1日に大阪市立敷津小学校の2~3年生20名が来館されました。
当小学校からは初めての美術館訪問ということで、校長先生が何度も展覧会を見に来てくださったり、スタッフと連絡を取ってくださいました。

地下1階の講堂に到着してすぐに引率の先生から「(今)どんな気持ち?」と子どもたちに問いかけると、「デパートみたい」「なんかワクワクする」「涼しい」などの声が上がりました。普段のオリエンテーションは、画像投影のために前方の照明のみを消して実施しますが、今回は子どもたちからのリクエストで、照明をすべて消して実施しました。まるで映画が始まる前かのように、子どもたちがワクワクしている様子が見られました。

今回は地下2階で開催している「コレクション1 80/90/00/10」展(以下、コレクション展)の鑑賞であることを子どもたちに伝えると、「えー、地下3階も気になる!」という美術館にとっては嬉しい叫びが上がりました。展示作品の中から、絵画3点、彫刻3点の作品画像を映し出しました。村上隆《727 FATMAN LITTLE BOY》(2017年)では、「ジェットコースターみたい」「(講堂に貼られている)ポスターと同じ絵」と次々に発言していました。はまぐちさくらこ《きいろいにおいがやってくる》(2009年)を見ると、村上作品と比較して「右(はまぐち作品)はパーンって爆発的な感じで、左(村上作品)は静かな感じ」と作品を見た時の最初の印象を伝えてくれました。マーク・マンダース《乾いた土の頭部》(2015-16年)の画像が映し出されると、「これって自分で作ったの?誰かが作ったの?」という質問が飛び出し、スタッフが「すべて誰かが作った作品だよ」と伝えると、「えー!」と驚く様子もありました。

その後は、展示室での活動内容を伝え、鑑賞サポートツール『アクティヴィティ・ブック』(※)をA4サイズの厚紙にコピーしたものを配布しました。打ち合わせ時に、担任の先生から、特に小学2年生には『アクティヴィティ・ブック』のオリジナルサイズは絵を描いたりするときに小さいかもしれないというご意見をいただいていたので、A4サイズに拡大コピーしました。担任の先生方と事前に相談して選んだ、「04 ビンゴゲーム」(対象:2年生)と「07 気になるもの」(対象:3年生)の取り組み方について、スタッフから簡単に説明した後、展示室に出発しました。

展示室では、学年ごとに分かれて活動しました。2年生はまず自由鑑賞しながらアクティヴィティに取り組み、3年生はマンダース作品の前でギャラリートークを実施しました。3年生とのギャラリートークでは、まず作品を前方からよく見るところからスタートしました。その後、トーカーのスタッフが「どんなところが気になった?」と聞くと、「(左下にある)木を外したら、崩れちゃうんじゃないかな」「画像では目が開いていると思ったけど、つむっている」「寝ている」「石を枕にしているみたい」と子どもたちが次々に発言しました。そして、全員で作品の後ろまで回り、ぐるっと一周すると、自分が見つけたこと、思ったことを今すぐにでもスタッフに伝えようと手を挙げて歩く様子もありました。「後ろからは顔が見えなかった」「(前から見ると)ツルっとしてたり、ボコボコしていて、(後ろは)ボコボコしているだけで、ほったらかしにしているみたい」など、前から見た時と後ろから見た時の違いを話していました。オリエンテーションで見たからか、マンダース作品から地下2階の吹き抜けエリアを挟んでちょうど正面に展示されている奈良美智《長い長い長い夜》(1995年)に多くの子が興味を示したので、みんなで作品の前に移動しました。ある子の「長い下駄をはいている」という発言に続いて、別の子が「赤ちゃんだから、背伸びをしている」と言うと、「赤ちゃんはバランスとれないじゃん」「だからくずれている」と、次々に前の人の発言から自分が思ったこと、見つけたことを話していました。スタッフが、絵の中で起こっていることを見ながらストーリーを作っていく時に、何もかも自由に話すのではなく、作品をよく見て、絵の中に見えていることから想像を膨らませてみようと促すと、子どもたちは、一生懸命作品の細かい部分を見直しては、話を続けていました。
その後、3年生は、展示作品の中から1点選び、その作品の簡単なスケッチとその作品が気になった理由について書くアクティヴィティ「07 気になるもの」に取り組みました。数人のグループで展示室を回っても、気になる作品はそれぞれ違うため、アクティヴィティに取り組む時には、各々自分が気に入った作品の前に行き、集中して取り組んでいる姿が見られました。

2年生は9個のマスに、「ザラザラ」「ゴツゴツ」などのオノマトペや、「うれしい」「びっくり」などの感情を表す言葉に対して、自分がピッタリだと思った作品を見つけて、絵や言葉で書くアクティヴィティ「04 ビンゴゲーム」に取り組みながら、ギャラリートークの前にコレクション展を鑑賞しました。言葉に合う作品を見つけるため、子どもたちは何度も展示室の中を回り、マスの中に見つけた作品の絵を描いたり、どうしてぴったりなのか理由を書き込んだりしながら楽しんでいました。同じ「デコボコ」というオノマトペでも、人によって選ぶ作品も違います。また同じ作品を見ていても、その作品にピッタリだと思う言葉が違っていました。例えば、中原浩大《レゴ》(1990-91年)を見て、「自分が好きなレゴを見られて『うれしい』!」と「うれしい」にピッタリくる作品として選ぶ子もいれば、「(作品の)後ろ側を見て『びっくり』した!」と「びっくり」にピッタリくる作品として選ぶ子もいました。お互いに書いたものを見せ合い、「そんな風に思ったんだ」「もう一回(その作品を)見に行こう!」と友達の考えに触れることも刺激になっているようでした。
40分ほど自由に鑑賞した後は、お待ちかねのギャラリートークです。2年生は、一通り見ているので、みんなとお話ししながら見たい作品があるだろうとスタッフが考え、子どもたちの希望を聞き取った結果、奈良作品を全員で鑑賞することになりました。こちらも、まずは作品を黙って1分ほどじっと見た後、スタッフが問いかけると、「釣りをしている網がすごい形をしている」「空き缶が釣れたんじゃないか」など、見つけたこと、思ったこと、感じたことを口々に話していました。そして、「○○さんが言っていたけど…」と3年生と同様に、クラスのお友達の発言を尊重し、前の人の意見を聞いて考えたことを発言する、対話によるトークを深めていくためにはとても重要な姿を多く目にしました。おそらく、学校でも、お友達の話にしっかり耳を傾け、その上で自分の意見を発言する力を身につけている賜物だなと感心しました。
最後に2年生全員で展示室を一周しました。歩きながら、まだ埋まっていないビンゴのマスに書かれている言葉に合う作品を探している子どもたちが、名残惜しそうに展示室を後にしていました。

先生方との打ち合わせでは、今回の来館のねらいとして、「図工の授業の中で友達との技術力の差に目が行き過ぎ、自分の作品に自信が持てない、殻を破れない子たちが多い。その子たちが美術館に展示されているさまざまな作品を見ることで発想の自由さを味わい、のびのびと製作するようになってほしい」ということを挙げられました。今回、たくさんの美術作品を見ることを通して多くの作者の発想の自由さに触れたみなさんが、いろいろなことを考えて作ってみることも楽しいんじゃないかなと思ってもらえていれば、とても嬉しいです。

大阪市立敷津小学校のみなさん、ご来館ありがとうございました。またのご来館をお待ちしています。[F.A]

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