4月28日に甲陽学院中学校の2年生202名が来館されました。 大人数のため、大きく2つのグループに分かれて、時間差をつけて来館していただき、オリエンテーションを2回実施しました。オリエンテーションでは、地下3階で開催されている「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」の作品を例に、作品情報に触れる前に、自分が思ったこと、考えたことを起点として、まずは、なぜそのように思ったのか、その理由を考えてみながら、作品をよく見てみることをお勧めしました。また、同じ作品を鑑賞していても、それぞれ気になるポイントも、そこから思うことも考えることも違うので、ぜひ展示室では友達同士で小さな声でお話しをしながら作品を見てほしい、とお伝えしました。 地下2階で開催されている「コレクション2 特集展示:メル・ボックナー」については、先生との事前の打ち合わせで数学が好きな生徒が多いと聞いていたので、メル・ボックナーの《セオリー・オブ・スカルプチャー(カウンティング)&プライマー》(1969-73年)の配置図と一緒に《セオリー・オブ・スカルプチャー(引用)》(1972年)を紹介し、今回のメル・ボックナー作品は数をテーマとしているので、数学の知識を活かしながら、謎解きをするように作品を楽しんでほしいとお話ししました。1年生の数学の授業の初めに「ユークリッド原論」を習うこともあり、《セオリー・オブ・スカルプチャー(引用)》の文中に出てくる「ユークリッド」という言葉に、ほぼ全員が反応していました。特に1回目のグループは、この言葉を紹介すると途端にスクリーンに映し出された配置図を見ながら、友達同士の話が止まらなくなるぐらい盛り上がっていました。 オリエンテーションの後、生徒たちは地下3階と地下2階に分かれて、鑑賞しました。生徒たちが特に熱心に鑑賞していたのが、メル・ボックナーの《セオリー・オブ・スカルプチャー(カウンティング)》(1969-72年)です。床に並べられている石の規則性を解読しようと、じっくりと作品を眺め、生徒同士で意見を交換している様子がいたるところで見られました。また、石の数をすべて数える生徒や、作品の前でしゃがみ、長時間考え込んでいる生徒もいました。 どんなことに気が付いたのか、どんなことを考えたのか、生徒たちにスタッフが聞いてみると、様々な意見が返ってきました。石が放射線状に並んでいる《セオリー・オブ・スカルプチャー(10への十)》(1972年)については、「(これは)ユークリッド原論の円ではない。メル・ボックナーの考える円なのではないか。」と、オリエンテーションで紹介した引用を踏まえた意見を教えてくれました。また、右から左に行くにつれて石の数が1つずつ増えていく《セオリー・オブ・スカルプチャー(一対一)》(1972年)については、「そろばんと一緒の考え方。メル・ボックナーは日本のそろばんを知っていたのではないか。」という意見もありました。 後日、先生からお送りいただいた、スクールプログラムのふりかえりシートには、オリエンテーションでの話をきっかけに、先生方が想像していた以上に生徒たちが熱心に作品を鑑賞している姿を見ることができたと書いてくださっていました。加えて、「案外、美術館は面白いかも」と感じている生徒も増えたのではないかというコメントもいただきました。今回初めて美術館を訪れたという生徒が多い中、美術館のことを少しでも面白いと思ってもらえたことは、大きな成果であるように思います。 甲陽学院中学校のみなさん、ご来館ありがとうございました。 またのご来館お待ちしています。[F.A]