3月25日、26日にびじゅつあーすぺしゃる「あなたもコレクター! 〜自分だけのコレクションルームをつくってみよう!〜」を開催しました。今回は、2日間で各日2回開催し、計34組77名の小学生とその保護者にご参加いただきました。
「びじゅつあーすぺしゃる」は、対象年齢別の各種「びじゅつあー」で行っている作品鑑賞を核としながら、そこに簡単な制作作業などを加えることにより、鑑賞を振り返られる時間を作っています。今回、「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」(以降、ピカソ展)を対象としたプログラムを開催するにあたり、年明けから検討をはじめ、展覧会の持つ多くの要素の中からハインツ・ベルクグリューン(1914-2007年)がコレクターであったことに着目しました。参加者自身がコレクターになりきり、ピカソ展の中から作品を選び、さらに選んだ作品の展示プランを考えることで、自身の見方、感じ方に触れることのできる内容を目指しました。
プログラムの導入では、大きな戦争をはさみながら画商として、世界有数のコレクターとして活躍したベルクグリューンの「情熱と眼しかなかった」という言葉を起点に今回の活動内容を紹介しました。あわせて、作品を選ぶために必要となる鑑賞のウォーミングアップとして、出品作品6点をスクリーンに投影し、スライドトークを行いました。ここでは、まず見つけたことを何でも話すことを促します。パブロ・ピカソ《座るアルルカン》(1905年)が登場すると、はじめは子どもからの「ナポレオンみたいな帽子」、「帽子と頭のサイズがあってない」と、最初に見て気になった点についての発言が多かった一方で、子どもたちの気負わない発言に触発されたのか保護者からは「女性のような体つきだが男性にしては小柄」、「どこに座っているのか、何をしているのかわからない」と、少し時間をかけて見てから推測するような意見が聞かれるようになりました。気になるところをきっかけに、どうして気になったのか考え、自分なりに推測しながら作品を見ることで作品鑑賞が深まることを伝え、いよいよ展示室へ自分がコレクションしたい作品を探しに行きます。
展示室では、ワークシートを持って作品を鑑賞しました。まず、展覧会をじっくり一周してから気に入った作品の1番目と2番目を選びます。1番お気に入りの作品にアンリ・マティス《ニースのアトリエ》(1929年)を選んだ参加者は、「のびのびとした気分があって『自由』という感じがした。見ていると気持ちが晴れやかになっていくから。明るい色づかいだから」と選んだ理由をワークシートに記し、2番目に選んだパウル・クレー《青の風景》(1917年)について「私の好きな青が使われている。人々が描かれていないけれど夜の外の寒さと家の温かさが感じられたから」と両方の作品の色彩に注目し、そこから得られた感情や温度を理由に作品を選んでいました。小学生の多くは、はじめ保護者と一緒に行動していましたが、気に入った作品を選ぶあたりから個々に行動し始め、選んだ2つの作品と一緒に展示したい作品のタイトルをメモしたり、自分ならどのような場所に展示するか考えたり、予定していた時間が足りなくなるほど熱心にワークシートに記入していました。
40分程度の鑑賞を終えて、いよいよ小さなコレクションルーム作りのスタートです。ピカソ展に展示されているほぼすべての作品を4センチ角程度に並べて印刷した作品シートから自分のコレクションルームに展示する作品を切り取っていきます。お気に入りの1・2番目の作品は額縁も描けるように余白を大きめに切り取り、その他の作品は余白なしで切り取ります。展示室で作品を決めきれなかった参加者は、ここでも作品選びをしながら、それぞれのペースで次の作業へと進みます。
今回のプログラムのために製作したコレクションルームは、時間が限られた中で参加者が簡単に扱えるように、あらかじめ厚紙に折り目を付け、マジックテープで留めて、組み立てられる小さな箱のような部屋にしました。どの場所に展示するか考えるうちに、それぞれのコレクションルームのコンセプトも少しずつ明らかになっていきます。本来であれば、コンセプトが先にあり、それに基づき展示しますが、初めての場合にはなかなか難しく、組み立てた部屋(コレクションルーム)と睨めっこしながら、検討していきます。彫刻台に見立てた木の端材を作品と空間に合うように選び、絵画作品との配置の関係を熟考した美術館さながらの展示空間を考えたり、自分の部屋に展示することを考え部屋を思い出し家具や窓を描いたり、なかには、コレクションルームの壁紙に緑色の画用紙を貼り、木々を描き、床には湖を描き、スタッフの準備期間中には思いもしなかった屋外展示を想定する参加者もいました。また、部屋のコンセプトがある程度決まってからも、作品を幾度も並び替え試行錯誤する様子も見られました。
多くの参加者が時間一杯まで考え、手を動かし続けていたので、お互いのコレクションルームを鑑賞する時間は持てませんでしたが、小学生と保護者で出来上がったコレクションルームを並べて、作品を選んだ理由やどうしてこのような部屋にしようと思ったのか等、楽しそうに話す姿が見られました。子どもたちからは「自分のコレクションルームが作れてうれしかった!」という制作の楽しさについての感想が多く聞かれ、保護者からは「(いつも展覧会を見るときには)目的を持って見るということがあまりないので、いつもと違う見方ができてよかった」、「いつもはキャプションからつい見てしまうが、今日はキャプションより先に作品をみることができた」と作品鑑賞についての感想が多く聞かれました。終了予定の時刻になっても、コレクションルーム作りを続ける参加者も多く、作品を選び、展示空間を考えることの楽しさと奥深さを感じるとともに、あらためて自身の見方、感じ方に向き合うことの面白さを感じていただけたのではないかと思います。
今回のコレクションルームは、自宅でもコレクションルーム作りの続きを楽しめるように組み立て式の仕様にしました。ピカソ展の作品でさらに展示替えをしてみたり、他の展覧会で見つけた好きな作品を展示してみたりしながら、これからもボロボロになるまで使ってもらえたら嬉しいです。ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました![K.Y]
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2023年3月25日(土)、26(日) 10:30~12:30/14:00~16:00
対象:小学生とその保護者 定員:各回10組20名
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