国立国際美術館

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ちっちゃなこどもびじゅつあー

ちっちゃなこどもびじゅつあー 〜絵本もいっしょに〜

2022年12月7日(水)

12月7日に「ちっちゃなこどもびじゅつあー 〜絵本もいっしょに〜」を開催しました。
「ちっちゃなこどもびじゅつあー 〜絵本もいっしょに〜」は0歳から小学生に入る前までの子どもたちとその保護者を対象とした美術館体験プログラムとして、年間8回程度開催しています。今回は、1日に3回開催し、15組31名にご参加いただきました。

参加される保護者の多くが、以前は美術館へ行っていたけど、出産を機に足が遠のいているとおっしゃいます。また、小さなお子さんと一緒に作品を見たいけれど、不安に思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。前回のレポート(※1)で全体の流れをご紹介したので、今回はプログラムでの出来事を簡単にレポートしていきます。実際の様子に触れていただくことで、今後、参加を検討されている方にご安心いただければ幸いです。

受付はプログラム開始15分前から始まります。初めての空間に不安そうな子どもも、講堂で「美術と絵本を考える会」メンバー(※2)が優しく迎え、絵本をマンツーマンで読んでくれるので、徐々に美術館という場所に慣れていくことができました。

講堂で本日の流れとスタッフの紹介があった後、「美術と絵本を考える会」メンバーのみなさんによる絵本よみからスタートします。この日のテーマは、「すべて未知の世界へ ― GUTAI 分化と統合」展の作品に多く登場する「赤」です。ささきしゅん作『ぶるばびぶーん』(福音館書店、2022年)、田中清代作『トマトさん』(福音館書店、2006年)の2冊を紹介しました。絵本の内容にあわせ、緩急がつけられたスピードで、情感豊かに読み上げられるお話しに子どもたちの目も釘付けになっていきます。言葉をしゃべり始めてない赤ちゃんも、絵本が進んでいく中で「あ!」、「うー!」など、声を出して楽しんでいる様子でした。

絵本の後は、展示室で実際に作品を見る前に簡単なウォーミングアップの時間です。大きなスクリーンに映った作品画像を見て、お話ししていきます。白髪一雄《天雄星 豹子頭》(1959年)が映し出されると、1歳2ヶ月のお子さんは指を指して笑ってくれました。おしゃべりはまだ始まっていませんが、その仕草と笑顔で、気に入ってくれた様子がよく伝わってきます。保護者の方は「色が混じっている」、「迫力を感じる」等、気づいたことや感じたことをお話ししてくれました。他にも「私は明るい作品だと思ったが、娘は暗い作品だと思った」等、同じ作品を見ていても、それぞれが違う感じ方をすると実感してくださった親子もいらっしゃいました。

さて、講堂で5点の作品画像を見た後、いよいよ実際の作品に会いにいきます。絵本と作品画像をゆっくりと見ているので、見ることに少しずつ慣れている状態です。みなさんリラックスした雰囲気で、展示室へのエスカレーターを降りていきます。自分で歩ける子どもは保護者と手をつないで、もっと小さなお子さんで、首がすわっている場合には、抱っこ紐で前抱きにしてもらうなど、それぞれの月齢に合わせたスタイルで展示室を回ります。眠っている小さなお子さんは、ベビーカーに乗ったままで、エレベーターで展示室に向かいます。

展示室では、最初に白髪一雄《天雄星 豹子頭》の前で簡単なギャラリートークをしました。画像で見ている時と、実際に見た時の違いなどが話題にのぼります。その後は会場を自由に回っていきますが、広くて大きな空間に移動して驚いたり、中には展示室で泣き出してしまう子どもも。そうした時、保護者の方は不安に思われると思いますが、スタッフが一緒に付き添っていますので、ご安心ください。一度展示室を出て、他の場所を探検し、少しずつ落ち着いた後に、会場に戻る親子もいらっしゃいました。

また、まだ乳幼児で小さいから、自分の子どもは作品を見てないのではないかと思う方もいらっしゃるかもしれません。ですが、ベビーカーでの鑑賞中、赤が印象的な山崎つる子《赤》(1956/85年)の前で、手をグーっと伸ばしたり、手足をバタバタ動かしたりする赤ちゃんもいます。作品ごとに違う反応を見て、保護者も「この作品は好きなのかな?」と子どもとのコミュニケーションを取っていたりします。

作品鑑賞を終えると、講堂に戻り、展示室で保護者が感じたことや、お子さんの様子をお話しして、振り返ります。隣り合って展示されている、絵の具が中心から放射線状にのびる白髪一雄《作品》(1954頃)、渦巻き状に描かれた白髪一雄《作品》(1954頃)を見て、それぞれに「バーン!」と「ぐるぐる!」とお話ししていた子どももいました。作品を見て感じたことを教えてくれる子どもを見て、「こんなにお話ししてくれるんだ!」と驚く保護者もいらっしゃいました。最後に、絵本を一冊、きしだえりこ文、ほりうちせいいち・ほりうちもみこ絵『くまとりすのおやつ』(福音館書店、2008年)を読んで、プログラムを終了しました。

ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました。これを機に、また小さなお子さんと美術館にお越しいただけると嬉しいです。ご来館、お待ちしております。[S.S]

※1 前回の「ちっちゃなこどもびじゅつあー 〜絵本もいっしょに〜」の様子はこちら
※2 内川育子(司書)、内部恵子(朗読家)、土居安子(大阪国際児童文学振興財団)、中東ゆうき(詩人)、藤井君代(司書)

※以前は、キッズルームでの絵本よみの後、展示室でギャラリートークを実施していました。2020年度より、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、講堂での絵本よみとスライドトーク、展示室での自由鑑賞という形式で進め、今回は同感染症対策緩和を受けて、展示室内でのミニギャラリートークも実施しました。

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2022年12月7日(水) 1)10:30〜11:50 2)13:15〜14:35 3)15:00〜16:20
対象:0歳~未就学の乳幼児とその保護者
定員:各回5組10名
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