国立国際美術館

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ちっちゃなこどもびじゅつあー

ちっちゃなこどもびじゅつあー 〜絵本もいっしょに〜

2022年11月30日(水)

11月30日に「ちっちゃなこどもびじゅつあー 〜絵本もいっしょに〜」を開催しました。

「ちっちゃなこどもびじゅつあー 〜絵本もいっしょに〜」は0歳から小学生に入る前までの子どもたちとその保護者を対象とした美術館体験プログラムとして、年間8回程度開催しています。今回は、1日に3回開催し、14組31名にご参加いただきました。

保護者の大半は、美術館には行きたいけれど最近では足が遠のいているとおっしゃいます。出産前まではよく美術館に来ていたけれど出産後は来られていない方、展示室で子どもが泣いたり騒ぐのではないか心配される方、子どもと一緒にどうやって美術館を楽しめばよいかわからないとおっしゃる方等、その理由は様々です。このプログラムは、その方々の思いに寄り添いながら小さな子どもと保護者に安心して美術館体験していただけることを大切にし、実施しています。今回は、当日の流れを中心にレポートしていきます。

まず、講堂での絵本よみからスタートします。普段、絵本を介して保護者と子どもは、絵本に登場する人物、もの、様子等をよく見ながら対話し、時には登場人物はどんな気持ちか等、想像を膨らませながら絵本を楽しんでいるのではないかと思います。それと同じように作品も楽しんでもらえればと考え、小さな子どもにとって馴染みのある絵本よみをプログラムの導入に取り入れています。絵本は、実際に鑑賞する展覧会と緩やかな関連を持たせながら「美術と絵本を考える会」メンバー、大阪国際児童文学振興財団のご協力のもと、選書します。今回は、「すべて未知の世界へ ― GUTAI 分化と統合」展(以降、具体展)の作品に多く登場する「赤」をテーマに作品を選んだ上で、絵本を選びました。

当日、小さな子どもたちは元気よく挨拶してくれたり、少し不安そうな表情を浮かべていたり、時にはベビーカーの中ですやすやと眠りながら、保護者と一緒に受付にやってきます。講堂に入ると空間をじっと観察する子、初めての場所なので、入るのをためらう子など反応はさまざまですが、「美術と絵本を考える会」メンバーが明るく優しく迎え、待ち時間には紹介する絵本以外に選んでいる絵本をマンツーマンで紹介するので、保護者も子どももプログラムスタート時間を忘れるくらいゆったりと過ごしています。

スタッフの自己紹介とプログラムの流れの紹介後に、いよいよ絵本よみがスタートです。ざわざわしていた子どもたちの意識がぎゅっと絵本に向けられます。「美術と絵本を考える会」メンバーが絵本を2冊読んだ後は、大きなスクリーンに作品画像を投影して、作品でおしゃべりタイムです。

しゃべり出している年齢の子どもは、自分の思ったこと感じたことを話していきます。白髪一雄《天雄星 豹子頭》(1959年)が映し出されると、「赤!」という作品を見て印象的な色について発したり、まだしゃべり出していない年齢の子どもは手をあげて反応してみたり、保護者は「ダイナミック」「エネルギーがぎゅっと。勢いのある線」と、最初は戸惑いつつも、他の保護者の意見や、子どもたちから出てくる言葉に刺激されて、作品が進むにつれて、たくさんお話しくださるようになりました。子どものためのプログラムだろうと思って参加している保護者の多くは、スタッフからの問いかけに答える中で自らが参加者であることに気づき、関わり始めます。展覧会を鑑賞する前のウォーミングアップとして、5点ほどスライドで作品を鑑賞し、いよいよ展示室へ向かいます。

展示室では、抱っこ紐やベビーカー、自ら歩く子ども等、それぞれにあったスタイルで鑑賞します。(赤ちゃんが作品をよく見られるように、抱っこ紐を利用する場合は(可能な月齢であれば)前抱きをおすすめしたり、ベビーカーであれば背もたれを起こす等、アドバイスをします。)今回は、スライドでも紹介した展覧会冒頭の白髪一雄《天雄星 豹子頭》で短い時間ではありますが、ミニギャラリートークを行いました。保護者の中にはスライドと実際の作品の違いから作品への印象が大きく変わったというような声が聞かれました。一方で、自分で歩いて鑑賞する子どもは、展示室に入ると他の作品が気になる様子で、1点の作品の前でじっと話を聞くのは難しく、興味のある作品に向かう好奇心いっぱいの姿が印象的でした。

鑑賞の際には、参加者1組ずつに「美術と絵本を考える会」メンバーまたは美術館スタッフが付き添い、子どもが気になった作品を中心にそれぞれのスピードで自由に鑑賞を進めていきます。子どもがどんな作品に興味があるのか、どのような見方をしているか等、作品の前での子どもの目線や反応を保護者に伝えながら鑑賞することによって、たくさんの作品の中から「丸が描かれている作品をよく見ている」、「少し立体的な作品が気になっていたようだ」と小さいながらも作品を楽しむ子どもの様子に、保護者が驚き、関心を寄せる姿が見られました。

作品鑑賞の時間を終え、講堂に戻りそれぞれの参加者がどんな作品が気になっていたか等、作品の前で感じたことや子どもの反応、様子などを共有するふりかえりの時間を過ごし、最後に1冊絵本を読んでプログラムは終了です。ふりかえりで、展示室での子どもの様子を語る保護者の多くはいつも接している子どもの知らない一面に驚き、また作品を前にした時のそれぞれの反応からそれぞれの子どもの個性をあらためて感じているようでした。

今回のレポートでは、プログラムの流れを中心にお伝えしましたが、次の機会には、ちっちゃなこどもたちの反応をより具体的にお伝えしていきたいと思います。

ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました!今回のご参加を機に、気軽に美術館に遊びに来てくれたら嬉しいです。ご来館お待ちしています。[K.Y]

※以前は、キッズルームでの絵本よみの後、展示室でギャラリートークを実施していました。2020年度より、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、講堂での絵本よみとスライドトーク、展示室での自由鑑賞という形式で進め、今回は同感染症対策緩和を受けて、展示室内でのミニギャラリートークも実施しました。

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2022年11月30日(水) 1)10:30〜11:50 2)13:15〜14:35 3)15:00〜16:20
対象:0歳~未就学の乳幼児とその保護者
定員:5組10名
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