11月7日に大阪市立中泉尾小学校5年生54名が来館しました。
「線表現の可能性」展と「コレクション1 彼女の肖像」展(両展とも2024年11月2日~2025年1月26日開催)が開幕し、初めての学校団体でした。講堂でのオリエンテーションで、「線表現の可能性」展の紹介の導入として、美術館スタッフから「みんなはどんな線で絵を描くかな?たくさんあげてみて」と投げかけられると、直線、波線、ジグザグと次々に答えていました。
続いて、これから鑑賞する作品の画像がスクリーンに映し出されると、子ども達は様々に反応を示していました。町田久美《雪の日》(2008年)が登場すると、描かれている人物に注目する発言もありましたが、スタッフから線に注目するように促されると、ある子は「線が形になっている」と話しました。続いて、ゲルハルト・リヒター《STRIP(926-6)》(2012年)では、さまざまな色の横線で構成されている様子を見て、それぞれ別の子から「動いているようにみえる」、「目がチカチカ」と線と色の効果から感じることを言葉にしていました。オリエンテーションの冒頭では、美術館スタッフの投げかけに応えて発言していた子ども達でしたが、この作品の紹介あたりから、作品を見て気づいたこと、考えたことを話すことに慣れてきたのか、美術館スタッフが促さずとも友達同士で話をする姿がたくさん見られるようになりました。
展示室では、子どもたち全員が『アクティヴィティ・ブック』(※)に取り組みました。『アクティヴィティ・ブック』には、30種類のアクティヴィティが掲載されているため、先生との事前の打ち合わせで、主に取り組むアクティヴィティを決めます。子ども達がアクティヴィティにスムーズに取り組めるように、基本的には、事前に目を通してもらっておくことが望ましく、今回は、打ち合わせ時に全児童分の『アクティヴィティ・ブック』を先生に持ち帰っていただき、どんなアクティヴィティがあるのか子どもたちに見ておいてもらいました。
今回、主に取り組んだ「14賞状」は、作品を選んでからその作品にあげたい賞を考えたり、賞のタイトルを考えてから、その賞をどの作品にあげたいか考えます。そして、その賞の理由を書きながら賞状を完成させるアクティヴィティです。地下2階のコレクション展では、7人程の子どもが小さな声で話しながら、マーク・マンダース《乾いた土の頭部》(2015-16年)の前で、アクティヴィティにチャレンジしていました。それぞれの『アクティヴィティ・ブック』には、同じ作品であっても、「なぞで賞」、「大きいで賞」など同じ賞はなく、どうして自分がその賞を考えたのか、理由も丁寧に書かれていました。さらには、友達同士で話しながら考えたことを共有する姿が見られ、そうすることで、同じ作品を見ていても一人一人、作品から思うこと、感じることが違うということを実感しているようでした。他にも、サニー・キム《ヤッホー、少女たち》(2002年)では、「みんなで笑っているのに、なぜか怖く見えるから」という理由で「不思議で賞」と書いている子もいました。また、地下3階の「線表現の可能性」展では、エミリー・カーメ・ウングワレー《ヤム(ヤムイモ)》(1995年)を見て、「線を色々な方向にして、アリの巣みたいだと自分は思った」と、まず本文に理由を書き、考えに考え抜いて最後に「おもしろいで賞」と書いていました。
子ども達が、事前に『アクティヴィティ・ブック』を見ていたことが功を奏し、「賞状」以外にも、それぞれがチャレンジしてみたいと思うアクティヴィティに迷うことなく、次々と挑戦していました。『アクティヴィティ・ブック』に取り組みながらの約50分間の活動で、子ども達は飽きることなく集中して、作品を鑑賞していました。そうした普段の学校生活では見ることのできない子ども達の熱心に作品と向き合う様子に先生方は驚きつつも、大変喜ばれていました。
大阪市立中泉尾小学校のみなさん、ご来館ありがとうございました。たくさんのアクティヴィティに取り組むには、まだまだ時間が足りなかったのではないかと思います。ぜひ、今日の続きを楽しみに美術館へ遊びに来てください。またのご来館お待ちしています。
山本恵子(当館研究補佐員)
※ アクティヴィティ・ブックに関する詳細はこちらから


