4月28日に初芝立命館中学校の2年生130名が来館されました。
普段の美術の授業では、絵を描いたり、美術作品の鑑賞をしているという生徒のみなさん。オリエンテーションの冒頭に、美術館に行ったことがあるか聞いてみると、ほとんどの生徒が行ったことがあると手を挙げました。
「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」(以下、ピカソ展)について、展覧会の概要を簡単に紹介した後、展示されている作品のなかから、パブロ・ピカソの《黄色のセーター》(1939年)を例に、感じたこと、思ったこと、考えたことを手始めに、その考えなどがどこから来るのか(理由)を探しながら、作品をよく見るという、鑑賞の楽しみ方を紹介しました。
「コレクション2 特集展示:メル・ボックナー」(以下、コレクション展)の展示室の画像が映ると、「石が並べられている」、「バラバラ(に見える)」といった反応がありました。メル・ボックナーの《セオリー・オブ・スカルプチャー(カウンティング)》(1969-72年)は、床に並べられている石の数を数えることをきっかけに、作品を楽しんでほしいとお話ししました。また、メル・ボックナーと同時代に活躍した日本人作家のコンセプチュアル・アートの作品として、河原温の《JUNE 23, 1980, Todayシリーズ(1966-2013)より》(1980年)、高松次郎の《日本語の文字(この七つの文字)》(1970年)と、《影》(1977年)をご紹介しました。先にメル・ボックナーの作品で数を数えることをお話ししたことで、《日本語の文字(この七つの文字)》の画像を見てすぐに、画像に映っている文字が7文字であることに気が付いた生徒もいました。先に紹介したピカソなどの作品が、色やかたちなど、目に見えたことが心を動かすことに対して、メル・ボックナーの作品のようなコンセプチュアル・アートは、考えることで頭に刺激を与える作品であるということをお話ししました。
講堂でのオリエンテーションが終わると、地下2階のコレクション展から鑑賞するグループと、地下3階のピカソ展から鑑賞するグループに分かれて、それぞれ鑑賞を開始しました。
ピカソ展では、3~4名の小グループになって作品を鑑賞している様子が多くありました。そのなかで、ピカソの《雄鶏》(1938年)の前でお話ししている生徒数人にスタッフが声をかけると、「ニワトリを描く線が1本じゃなくて、何本もあって、動きを感じる。」と話していて、作品の細部までじっくりと鑑賞していることが伺えました。作品をタブレットで撮影している生徒も多く、なかには後から読み直すためか、作品解説やパネルを撮影している生徒もいました。
コレクション展では、鑑賞サポートツールの『アクティヴィティ・ブック』(※)のアクティヴィティ「07 気になるもの」に取り組みました。「07 気になるもの」は、展示されている作品のなかから、自分が気になった作品を一つ選び、じっくりと作品を見てスケッチをし、自分がその作品がどうして気になったのか理由を考えて書くというアクティヴィティです。今回は、一人一台持参したタブレットにアクティヴィティのページを取り込んで、取り組みました。メル・ボックナーの《セオリー・オブ・スカルプチャー(カウンティング)》では、作品の前で立ち止まり、石がどんな規則で並べられているのか、友達同士で話し合っている姿がありました。また、メル・ボックナーの作品だけでなく、日本人作家の作品も興味深そうに見ている生徒も多くいました。なかでも多くの生徒たちの印象に残った作品が、オノ・ヨーコの《忘れなさい》(1988年)だったようで、スタッフがタブレットを見せてもらうと、多くの生徒が気になった作品にこの作品を選んでいました。選んだ理由を聞くと、「タイトルの《忘れなさい》は、何を指しているのかわからない。この作品のことだとしたら、余計に忘れられなくなった。」と話していました。
展示室から講堂に戻り、生徒たちは、自分が気に入った作品について、制作年などの作品の情報、気になったポイントをタブレットに打ち込み、アクティヴィティを完成させました。
先生から事前に伺っていた今回の来館目的は、生徒たちが自分の固定観念を壊して、多角的な視点を持つということでした。当日、当館に来る前には、大阪芸術大学のアートサイエンス学科でプロジェクションマッピングなどについての講義を聞いてきたそうです。この日だけでも、たくさんの最先端技術や美術作品を目にした生徒のみなさんが、どのようなことを感じ、そこからどう考え、どのような視点が培われたのか、とても楽しみです。
初芝立命館中学校のみなさん、ご来館ありがとうございました。
またのご来館お待ちしています。[F.A]
※アクティヴィティ・ブックほか、鑑賞サポートツールについてはこちらから


