国立国際美術館

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第28回 中之島映像劇場「Our Times」

2025年10月4日(土)

B1階講堂

第28回中之島映像劇場「Our Times」は、2025年10月5日まで開催中の特別展「非常の常」と共鳴する短編作品5本による上映会です。

藤井光(1976年、東京都生まれ)の《COVID-19 May 2020》(2020年)は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、臨時休館していた東京都現代美術館の中で撮影されました。藤井自身も参加していた「もつれるものたち」展には、全地球規模の政治・経済・社会・環境的な危機に言及する作品が集められていましたが、そのような危機が予期せぬ形で展覧会に反映されています。藤井の言葉を借りていうと、孤立こそが連帯のかたちだったあの逆説的な時間の記録だと呼ぶことができるでしょう。

アン・ジョンジュ(1979年、韓国生まれ)とチョン・ソジョン(1982年、韓国生まれ)は、ソウル市中心にある立入禁止区域のバムソム島と無人状態の韓国国立現代美術館を舞台に《機械の中の幽霊》(2021年)を制作しました。都市開発による破壊から再生した生態系とパンデミック影響下の人間社会が交差する中、『カメラを持った男』(1929年)で知られるジガ・ヴェルトフの革命的ロマン主義は、 AIドローンの送出する過剰な情報に媒介され、非人間の主導する21世紀の視覚文化へと更新されていきます。

20世紀なかば、詩人・画家のアンリ・ミショーは、幻覚剤のメスカリンを服用して精神の限界領域を探求し、その結果を『みじめな奇蹟』、『荒れ騒ぐ無限』、『砕け散るものの中の平和』などに記録しました。折笠良(1986年、茨城県生まれ)の《みじめな奇蹟》(2023年)は、文字とデッサンからなる同名の原作に、動きと色彩、そして声を与えたアニメーション作品です。記号と形象の境界線で舞い踊るテキストとイメージは、自ら課した危機に向き合い、「自分自身の精神の速度の主人」としてとどまることを追求していたミショーを再びこの世に召喚しています。

ジョナサン・グレイザー(1965年、イギリス生まれ)による《Strasbourg 1518》(2020年)は、フランスとドイツの国境付近、ストラスブールで発生したといわれる「1518年の踊り病」をモチーフにしています。新型コロナウイルスの感染拡大により国境が封鎖されていた頃、グレイザーは国内外のダンサーにiPhoneを送り、彼ら/彼女らが自宅の個室で撮影した映像を集めました。彼のいう「孤立した協業(collaboration in isolation)」から生まれたこの作品は、恐怖と絶望、抵抗の入り混じったあの禍の時間と、それを乗り越えてきた私たちの自画像です。

簡単に虚像を作って操作できる時代に、磯部真也(1982年、神奈川県生まれ)は、自然に全てを委ねて、与えられた変化を黙々と見守る制作の方法を選びました。《For rest》(2017年)は、森の中に被写体を設置して、その変化を5年間にわたって16ミリフィルムで記録した作品です。映像に人間の姿は一切映っていませんが、個々の生と死が巨大な命の循環の一部であるというごく当たり前の事実が、いまを生きる希望になることを気づかせてくれます。

約1時間。中之島映像劇場史上最短のプログラムに凝縮された時間と、長く続くその余韻を共有できれば幸いです。

上映作品
藤井光《COVID-19, May 2020》(2020年/5分49秒)
アン・ジョンジュ/ジョン・ソジョン《機械の中の幽霊》(2021年/20分10秒)
折笠良《みじめな奇蹟》(2023年/8分13秒)
ジョナサン・グレイザー《Strasbourg 1518》(2020年/10分)
磯部真也《For rest》(2017年/17分/16ミリフィルムをデジタル変換)

開催日
2025年10月4日(土)
開催時間
午前と午後、同一のプログラムを各1回上映します(開場は各回開始の15分前)
午前:11:00開始―12:15終了予定
午後:14:00開始―15:15終了予定
定員

各回先着100名(全席自由)
当日10:00からB1インフォメーションにて整理券を配布します(1名様につき1枚)

参加費

無料

主催

国立国際美術館

協賛

公益財団法人ダイキン工業現代美術振興財団

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