第5回中之島映像劇場
浪花の映像の物語
―東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品から―
今回の主題は、他ならぬ「大阪」です。時代は戦前。とはいえ、単なる回顧に留まるものではありません。この都市の持つ力が様々な局面で発揮されていた時代の映像を辿ることは、現在の大阪の姿と照らし合わせ、将来像を描くよすがになるのではと考えています。
映像は優れた記録のメディアです。それとともに、卓越した表現のメディアでもあります。記録と表現という2つの位相は、実は劇映画や記録映画というジャンル分けにかかわらず、あらゆる映像作品に共存しています。今回のプログラムは記録映画編と劇映画編とに分けていますが、あくまでも便宜的なものです。溝口健二が双方の作品を監督していることが一つの証左です。どの作品も、内容的にも表現手法的にも、当時の「尖端」を走っていたものです。
「美術と映像」を巡る作品を紹介してきた中之島映像劇場では、過去2回、東京国立近代美術館フィルムセンターとの共催による上映会を開催しました。普段見る機会の少ない同センター所蔵の貴重な映像群を、ここ関西で紹介するという役割がまずあります。同時に、近年映画館のデジタル化に伴うフィルム・メディアの危機的な状況に対して、35mmフィルム上映にこだわり、その良さを堪能していただくという意味もあります。
今回上映する映像は東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵ですが、何本かは個人やコレクターから寄贈されたフィルムからの復元です。この中之島映像劇場は上映だけでなく、眠る作品を調査し、映像の発掘と保存に関しても貢献したいと考えています。まずはその第一歩を踏み出そうというわけです。
- 主催
- 国立国際美術館、東京国立近代美術館フィルムセンター
- 協賛
- (財)ダイキン工業現代美術振興財団
- 開催日
- 2013年3月16日(土)、3月17日(日)
Aプログラム
- 《アサヒコドモグラフ No19》(1939年)
- 《地下鉄の出來るまで》(1938年)
- 《大阪倉庫の爆發》[不完全版](1917年)
- 伊奈精一・溝口健二《朝日は輝く》(1929年)
Bプログラム
- 溝口健二《浪華悲歌【なにわえれじい】》(1936年)