第24回中之島映像劇場では、「ケア」という主題から戦後日本のドキュメンタリー映画に流れる水脈に光をあてます。“care”(ケア)は、健康に対する配慮やそのための手助けといった行動を指しますが、看護や介護、福祉、保育の現場のみならず、生存に関与するあらゆる空間で実践されているものです。地域や社会のなかで孤立し、苦しみを抱えるケアの受け手と与える者との繋がりが、既存の人間関係に縛られない、新たな共同性を創発することさえあります。個人の判断と責任が強く求められる現代の社会状況で、生の営みがいかに多様なアクターとの連関のなかで支えられているかを、ケアの思考は喚起します。
ケアの概念は、近年のアートおよび映像表現の世界でも関心を集めていますが、過去の記録映画の取り組みをたどる導きの糸にもなるはずです。福祉映画の巨匠・柳澤壽男が「撮りながら考え、考えながら撮る」と述べたように、優れたドキュメンタリーには、制作過程で試行錯誤しながら、「ケアとは何か」を問い直してきた痕跡が認められます。それは医師が患者に行う治療行為が時に直線的であるのに対し、ケアが他者との応答を繰り返し、失敗も挟みながら調整を進める過程とも重なるものです。単なる介護や福祉の場の記録ではなく、映画がどのようにケアの空間に寄り添い、容易に答えの出ない問いと向かい合ってきたか、上映を通して考える機会になることを願っています。
3月18日(土)
- 13:00- Aプログラム(冒頭、担当者による解説を行います)
《痴呆性老人の世界》(16mm/1986年/84分)※国立映画アーカイブ蔵
※作品タイトルは、オリジナルを尊重して、そのまま記載しています。
- 15:30- Bプログラム
《おてんとうさまがほしい》(16mm/1994年/47分)
《保育園の日曜日》(デジタル上映【原版:16mm】/1997年/20分)
- 17:30- Cプログラム
《子どもをみる目 ―ある保育者の実践記録から―》(16mm/1978年/45分)※国立映画アーカイブ蔵 ※褪色したプリントでの上映です
《ともだち》(デジタル上映【原版:35mm】/1961年/59分)
3月19日(日)
- 10:30- Dプログラム(冒頭、担当者による解説を行います)
《夜明け前の子どもたち》(16mm【原版:35mm】/1968年/116分)※国立映画アーカイブ蔵
- 13:30- Eプログラム
《そっちやない、こっちや ―コミュニティ・ケアへの道―》(16mm/1982年/110分)※国立映画アーカイブ蔵
- 15:50- Fプログラム
《養護学校はあかんねん! '79.1.26ー31文部省糾弾連続闘争より》(16mm/50分/1979年)※神戸映画資料館蔵
※新型コロナウイルス感染予防対策を実施したうえで開催します。館内でのマスク着用など、来館者の皆様にもご協力をお願いします。
※入館時に体温測定を実施します。37.5℃以上の発熱が確認された場合は、入館をお断りします。
※新型コロナウイルス感染症対策のため、中止になる場合があります。
- 開催日
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2023年3月18日(土)・19日(日)
- 定員
100名(全席自由、先着順)
各プログラム入れ替え制
各日10:00から当日の各プログラムの整理券を配布します(1名様につき1枚)。- 参加費
無料