会期:
2006年9月30日~12月24日
現代日本の写真:記憶の風景 / 風景の記憶
国立国際美術館は開館以来、第二次世界大戦後の国内外の現代美術作品の展示・収集を中心に活動してきました。その中でも写真は、もはやジャンルの枠を超え、現代美術においては欠かせない表現手段として、当館のコレクションでも重要な位置を占めています。
今回は、近年収蔵された作品を中心に、現代日本の写真家や美術家の写真作品をご紹介します。
1.東松照明
1930年愛知県名古屋市出身の東松照明は、戦後日本を代表する写真家のひとりです。「メイキング・フォト」とよばれる構成的な写真のシリーズから、沖縄・長崎・愛知・京都など特定の都市を集中的に撮り続けた一種のドキュメンタリー写真まで、その作風は多様です。今回は、最初期の代表作から90年代までの作品9点をご覧いただきます。
2.石内都 / 畠山直哉 / 宮本隆司
亡くなった母の痕跡を刻印するよう撮りためられた《Mother's》シリーズや、幼い頃に住んだ横須賀の心象風景を紡ぎ出すように記録した《YOKOSUKA AGAIN》など、個人的な記憶にまつわる作品を制作する石内都。
東京という大都市の地下にひっそりと存在する地下水路を撮った《アンダーグラウンド》のシリーズや、都市を建設するために切り出される石灰石鉱山が発破される瞬間を捉えた《ブラスト》など、都市や自然の風景を独自の視点で記録し続ける畠山直哉。
「建築の黙示録シリーズ」や「神戸1995」など廃墟を思わせる場所を撮り続け、ノスタルジックな記憶を甦らせる宮本隆司。
国際的にも高く評価されている3人の代表的なシリーズを展示します。
3.オノデラユキ / 米田知子
ここで紹介する二人の女性写真家は、ともに海外を拠点に活躍しています。
オノデラユキはパリを拠点とし、独自の手法でありふれた日常の断片をモチーフに、見たことのない様なイメージをつくり出しています。《古着のポートレート》は空を背景にした古着が、まるで子供の肖像のように写し出され、不思議な雰囲気を醸し出しています。
ロンドンを拠点に活動する米田知子は、入念なリサーチのもとにある特定の場所にまつわる記憶や歴史を主題にしたシリーズ作品を発表しています。今回展示されている「見えるものと見えないものの間」というシリーズは、同様の手法で、20世紀の著名人たちの眼(鏡)を通して見た歴史や記憶を表現した作品群です。
4.石原友明 / 大島成己 / 木村友紀 / やなぎみわ
このセクションでは、関西を拠点に活動する美術家たちの写真作品を展示します。被写体が前面に押し出されながらも、焦点は背後の景観に合わせられているためその表情は見えない、奇異なセルフポートレートを撮る石原友明。形態的な類似性をさも意味ありげに提示しながら、そこに意味を見出すことを無効とさせるような木村友紀の巨大な指の写真。建物のガラスに映る景色と等価する視線の複雑な耕作を、コンピュータを介在させて表現した大島成己。同じくCGを使った写真作品で知られるやなぎみわは、制服によって画一化された女性像を廃止、幻想的な仮想空間を生み出しています。
5.現代の彫刻
近代までの彫刻は人間や動物といった生物をモチーフとして、具体的な対象物を三次元空間にリアルに再現してきました。一方、現代の彫刻は、もはやそうした具象的なモチーフの再現にとどまらず、抽象的なテーマや自然そのものを表現対象とし、新しい素材や技法で多様な展開をみせています。そうした現代彫刻の中から、今回は特に自然や風景をモチーフにした立体作品を展示します。