会期:2003年10月9日~11月25日
本展は、現代美術における素材としての土に注目し、土による表現の可能性について、現在活躍する9名の日本人作家の試みを通して検証した展覧会。
現在の都市をおおう人工的な物質感や仮想現実に囲まれた抽象的な生活空間。実在感の欠如と身体的な感覚の退化した現代人にとって、土という素材の持つ原初的な存在感は、それ自体が一つの強いメッセージとなりうるのではないだろうか。その意味で、土の造形のもつ多様な表現力に今一度注目すべき時ではないか。
本展は、このような問題意識を根底に据えながら、いわゆるクレイワークと呼ばれる作品が、焼き物としてのプロセスや陶芸としての卓越した技術と、現代美術としての造形性との関係からどのように認識されるのかという観点を取り込み、それによって、今まで見えてこなかった美術表現のあり方や形式が浮き彫りにされる機会となることを企図したものである。
出品作品は、いずれも作家の近年の作品ないしは新作が中心であった。作品は単体としてのものからインスタレーション的な傾向までと幅広く、また土との関係性もさまざまであった。展示方法としては、格差かごとにスペースを区切り、各自が展示プランの段階から構想しながら組み立てていく個展形式の展観にすることによって、ここに刺激的な展示空間を現出させていた。
会期中には、展示会場で鯉江良二の制作風景を撮影したヴィデオを上映。また関連イヴェントとして出品作家2名による対談や講演会の他、日野田崇によるワークショップを行うなど、クレイワークに対する理解を促す、さまざまな普及活動を展開した。
出品作家 井上雅之、鯉江良二、重松あゆみ、杉山泰平、西村陽平、日野田崇、星野暁、前田晶子、三島喜美代