会期:2002年6月6日~7月21日
本展は、1940年代後半から1960年代の美術史上において、重要な役割を果たしたイタリアの3人の偉大な画家に焦点をあてた展覧会である。
アフロ(1912−1976)は、1949年にアメリカでデビューを飾り、抽象表現主義の影響を受けながらも、キュビスム的空間やシュルレアリスムの暗示性に触発された芸術を発展させ、その秀逸な筆触によって色彩と形態の詩的な構成をつくり出した。アルベルト・ブッリ(1915−1995)は、絵画作品には用いられなかった素材、麻布袋や木、鉄、プラスチックなどを画面に取り入れ、それまでの芸術的価値の転換を図った。ブッリによる大胆な素材の組合せや、破ったり燃やしたりする素材の加工は、ふつうの絵画には見られない強烈な存在感とダイナミックな構成力を生み出し、イタリアの美術が戦後ヨーロッパを支配したアンフォルメルの影響から脱する原動力となったとも言われている。ルチオ・フォンタナ(1899−1968)は、戦前から抽象彫刻を制作していたが、戦後は数次にわたる「空間主義宣言」を唱え、カンヴァスに穴をあけ、切り裂き、砂やガラス片を散りばめるといった平面性を打ち破る三次元的な絵画の提示を試み、世界に衝撃を与えた。また、建築家たちとの共同制作によって、ネオンによる《光の立方体》や《ネオンのアラベスク》などを創作している。そして 1958年にはモノクロームのカンヴァスに鋭いナイフで別の次元の裂け目を切り開くという行為に立ち戻り、表面の絶対性を改めて否定した。
これまで戦後イタリア美術は、表現手法の突出した作家の紹介が中心になされてきた。本展覧会では、ブッリ作品に見られる圧倒的存在感やフォンタナ作品のような先鋭的空間表現に代表される前衛的芸術表現に、アフロのような詩情豊かな戦後第一世代の抽象作品を加えることによって、イタリア戦後抽象の多様な展開を広く紹介すると共に、世界の戦後の美術史に与えた多面的な影響を検証する試みとして一定の成果を得ることができた。