会期:2000年6月15日~7月16日
国立国際美術館の建物は、既存の仕切り壁のない広大な展示場、変則的な斜めの天井、ガラス張りの巨大な壁面などを有し、日本の美術館建築にはあまり例をみない個性的な空間となっている。そしてこうした建築構造上の特性は、これまでの展覧会において、数多くのアーティストの創作意欲を刺激するとともに、訪れる者を魅了してきた。しかし2004年、当館は大阪の中心部、中之島へ移転する予定であり、この建物での活動も残すところあと数年となった。
そこで本展では、この希有な美術館建築空間それ自体を展覧会のテーマに据えてみた。そして、展示空間と作品との関係に強い関心を寄せながら活動を続けている国内外の6人のアーティストに、その空間から直接発想した新作の制作を委嘱し、その特性を再確認し、近い将来去ることになるこの建築物への贈り物にしようと試みた。
館内に、一般的な意味で、展示物らしき物が一切陳列されなかった本展は、その展示空間の斬新さと、空間と作品の織りなす美しさが注目の的となり、専門家からも一般観衆からも大きな反響を得た。テーマが新鮮かつ明快な、美術館ならではのグループ展であるという評価も得た。既存の作品を集め陳列するという方法を採らず、スポンサーの協力を得ながら複数の新作のみで美術展を成立させたことは、我が国の公立美術館では画期的な出来事であった。また、商取引が成り立つタイプの作品を作らない若手アーティストたちに、発表の場を提供した意義も大きく、彼らは本展ののち活動の場を広げている。国際交流という点では、ブラジルの若手アーティストを招聘し、新作を発表することができた。
本展は、このように当初の目的を達成したに留まらず幾つもの新しさと意義を有する企画展となった。
出品作家 寺内曜子、祐城政徳、平松伸之、和田みつひと、リヴァーニ・ノイエンシュワンダー、前沢知子