会期:2000年4月20日~5月28日
《重工業》(1949)や《森の掟》(1950)など記念碑的な絵画作品を生み出すばかりでなく、花田清輝と「夜の会」という芸術運動を起こし、『アヴァンギャルド芸術』『今日の芸術』といった重要な著作を刊行、また日本にアンフォルメル旋風を巻き起こすきっかけとなった「世界・今日の美術」展を企画するなど、敗戦後の日本美術界を牽引し続けた岡本太郎(1911−1996)を、日本万国博覧会(EXPO'70)のシンボルゾーンに創出した畢生の大作とも言える《太陽の塔》(1970)を中心として紹介した。
岡本は、絵画制作の他に1950年代後半から旧東京都都庁舎の陶板壁画《日の壁》(1956)のような建築物と結びついたパブリック・アート的な創作活動を数多く手掛けた。中でもEXPO'70のモニュメント《太陽の塔》は、その代表的な作品であり、多くの人々にこの作家のイメージを作り上げたといっても過言ではない。いわゆる専門家たちが岡本太郎を論じる場合、《太陽の塔》は通俗的作品として軽視される傾向もある。しかし「人類の進歩と調和」というテーマで近代技術文明を謳ったEXPO'70に対して、土俗的ともいえる「根源的な人間像」をぶつけた制作態度は岡本の「対極主義」に基づくものであったと言えよう。
本展では、《太陽の塔》のマケットや設計図面などとともに塔内を一部再現展示し、さらに代表的な絵画・彫刻・写真・家具などを加えて、岡本太郎の多彩な芸術世界を展観した。日本の前衛美術が、西欧の潮流に巻き込まれるかたちで推進していかざるを得なかった状況下、西欧的な表現様式に拠りながらも縄文文化などに日本独自の精神性を見いだし形象化し続けていった岡本太郎の芸術世界を紹介することによって、専門の研究者から一般観衆に至るまで、戦後の日本前衛美術を再考する一例となった。