会期:1996年9月5日~11月24日
今日、美術作品は驚くべき広がりを見せています。たとえば、絵画、彫刻など、昔からのジャンルでは、たえず新しい試みが繰り返され、その枠組みが見直されてきました。近年では、写真や映像による表現が急速に進展し、美術において重要な位置を占めてきています。そしてそれと呼応して、作品をつくる制作者自身も多様化しています。画家、彫刻家など制作者をさす従来からの呼び方ではしっくりとこない人が、優れた活動をしているという事実に、制作者の変化が象徴的かつ端的に表われています。
本展では、そうした制作者のうち、表現手段や作風を頻繁に変えたり、同時並行的に用いたりする人たちを取り上げました。もちろん、複数の表現手段を持っていたり、作風を変えることそれ自体は現代の制作者に限ったことではありません。たとえば、作風を変えることは、時の流れにしたがって、制作者ならば誰にでも起こることでした。しかし今日の多面的な制作者は、昔のそれとは異なっています。あらゆる選択の自由を背景にしていて、一見、捉らえどころがないようでありながら、実際は、自己の関心や目的を明確に持ち続ける、しなやかな人たちです。この展覧会では、そうした「美術家」とでも呼ぶしかないような制作者 6名と1グループの多面的な活動を紹介し、その活動の根底にあるもの探ってみました。
出品作家は、大森裕美子、岡崎乾二郎、土佐尚子、三輪美津子、柳幸典、和田千秋、アイデアル・コピー。