会期:1993年 2月19日~2月28日
20世紀イギリスの抽象美術を代表するベン・ニコルソン(1894−1982)は、バッキンガムシャーに生まれ、ロンドンの美術学校で学んだ。その後、ヨーロッパ各地を旅し、やがてパリでブラックらに出会い、モンドリアンやドローネーらが名を連ねていた「アブストラクション・クレアション」(抽象・創造)に参加。これを契機にヘンリー・ムーアらと共に、抽象芸術グループ「ユニット・ワン」を結成し、イギリスに本格的な抽象美術の土壌を築いた。
ニコルソンの哲学的ともいえる抽象画には、まるで上質な詩や短篇のような抒情性が漂っている。当初は、風景画や静物画を描いていたが、のちにピカソやブラックのキュビズム、あるいはモンドリアン、ミロなどの影響を受けて次第に抽象への模索を深め、まさに天性ともいうべき描線によるゆるぎない構成、微妙な変化を伴う新しい空間を造りあげる独自の作風を確立した。と同時に、イギリスの自然や日常の静物から目を離すこともなかった。半具象と抽象の間を揺れながら、その繊細な接点を表現し続けたといえる。
本展では、初期より最晩年に至るまでの油彩・レリーフ50点に加え、彼の芸術の中で重要な役割を示す具象的なドローイング・版画56点を一同に展観、詩情豊かなニコルソン作品を生涯にわたって回顧した。
会場は近鉄アート館を使用した。