会期:1989年6月10日~7月23日
1933年、山形県米沢市に生まれた細江英公は、早くから写真を志し、東京写真短期大学に学んだ。当時から、デモクラート美術家協会にも加わり、瑛九をはじめ同時代の芸術家たちと深い交流を重ねながら、一貫してモノクローム写真による可能性を追求している。その主観的な想像の世界とレンズを通した非情な記録が交錯する作風は、戦後、写真表現の新しい展開に重要な役割を果した。土方巽という存在を介して記憶に残る幼児の東北を再現した「鎌鼬」、三島由紀夫の肉体に生と死を重ね合わせた「薔薇刑」などの代表作を通じて、国内にとどまらず国際的にも高い評価を受けている。
本展では、多彩な展開を見せながらもレンズの背後の自分を見つめ続けている細江英公の足跡を、二百点のオリジナル・プリントにより回顧した。