国立国際美術館

HOME 活動レポート一覧

ちっちゃなこどもびじゅつあー

ちっちゃなこどもびじゅつあー 〜絵本もいっしょに〜

2023年5月10日(水)

5月10日に「ちっちゃなこどもびじゅつあー 〜絵本もいっしょに〜」を開催しました。

今回は、子どもと保護者の14組31名(1日に3回実施)にご参加いただきました。参加者からのアンケートには、「丁寧にお話ししていただいたり、子どもと関わっていただきありがとうござました。」、「子どもを連れて(美術館へ)行くことに抵抗感があったので来られて嬉しい。(子どもが)動き回る中、ありがとうございました。」といった、スタッフのサポートに関する感想が寄せられていました。こうした感想は今回に限ったことではありません。そこで、今回のレポートでは初めての方にも安心してご参加いただけるように、主に「美術と絵本を考える会」(※1)のみなさんや美術館スタッフによる参加者へのサポートについて具体的にお伝えしたいと思います。

本プログラム開催にあたり、鑑賞する作品に合わせた絵本の選書を担当する「美術と絵本を考える会」のみなさんは、プログラム当日の絵本よみの他にも、作品鑑賞中の参加者のサポートも担当してくださいます。このプログラムが常に人気で、参加した方々から非常に好評であるのは「美術と絵本を考える会」のみなさんの適切かつ優しいサポートがあるからといっても過言ではありません。

本プログラムは、0歳から未就学の乳幼児を対象としているプログラムであるため、参加者の中には0歳6ヶ月くらいの首が座ったばかりのお子さん、歩き始めてとにかく動き回りたい時期のお子さんもいます。もちろん発話の段階も様々です。そのため、プログラムの導入となる絵本よみでは、お申し込み時に把握できている年齢等を考慮し、絵本を選定し、読み方も検討しています。例えば、予定していた絵本が参加者の年齢に合わないのではないかと懸念される場合には、紹介する絵本自体の変更も検討します。もちろん、事前に把握できている情報だけの判断ではなく、当日の受付時から始まる子どもたちの様子も見ながら臨機応変かつ細やかに対応できるのは、「美術と絵本を考える会」のみなさんのそれぞれの専門性を踏まえた経験の賜物です。

絵本よみの間は、絵本に集中しているお子さんも多い一方で、展示室で鑑賞する作品をスクリーンに映し出して行う、スライドトークの時間になると講堂内を歩き回ったり、保護者に抱っこを求めるような子どもの姿も多々見られます。そのような場合にも、無理に参加を促すのではなく、保護者と一緒に見守り、危険のない限り自由に過ごしていただきます。また、講堂では子どもたちが過ごしやすいようにオリジナルの敷物に座りますが、子どもを抱っこした状態で床座りが難しそうであれば、保護者に椅子を用意するなど、少しでも過ごしやすくなるように細やかに気配りしています。
作品鑑賞の前には、展示室での過ごし方をお話しします。ここでも一般の方への案内に加えて、首が座っている赤ちゃんを抱っこ紐で抱っこする参加者には、可能であれば前抱きをお勧めするなど、赤ちゃんが作品の方を向けるように参加者にアドバイスをし、展示室へ出発します。

展示室では、なるべく1組に1人スタッフが付き添えるように回ります。スタッフは、子どもと保護者のペースに合わせつつ、様子を見ながら、子どもが作品との距離を保つのが難しそうであれば子どもと手をつないで鑑賞します。ベビーカーを利用している子どもが自分で歩きたいとなれば、保護者と子どもで手をつないでもらうために、スタッフがベビーカーを押したり、授乳やおむつ替えが必要になればキッズルームへ同行するなど、その時々で子どもと保護者が過ごしやすい環境を作っています。

もちろん、子どもへの声がけもその子の興味や様子に合わせます。今回であれば、メル・ボックナー《セオリー・オブ・スカルプチャー(カウンティング)》(1969-72年)の石ではなくチョークで床に描かれた数字に興味をもった5歳の参加者に合わせて、一緒に足し算をしたりしながら作品を楽しんだスタッフもいました。
まだお話しが始まっていない子どもと一緒に展示室をまわる場合には、子どもへの声がけと同じくらい、保護者とお話しする時間を取ります。例えば、子どもが作品を見ているときには、その反応を具体的に保護者に伝えます。0歳10ヶ月の子どもは、メル・ボックナーの数ある石の作品の中でも、大きめの石を見つけると足をバタバタする様子が見られたので、言葉にはできないけれどある特定の作品に対して体で反応を示していることを保護者に伝えました。
小さな子どもたちの視線に注目していると、作品1点をじっくり見ている場合もあれば、隣の作品と見比べるような様子が見られることもあります。また、作品のみならず、照明や壁を見ている場合、空間全体を見渡している場合、展示室にいる人の動きに注目している時もあります。スタッフは、こうした子どもの視線がどこに向き何を見ているのかを観察し、保護者と共有しながら参加者のペースで展示室を一緒に進みます。それによって、保護者が普段気づいていない子どもの物の見方を知る機会にもなっているようです。こうしたスタッフによるサポートがあることで、保護者はお子さんを美術館に連れてきてよかった、小さくてもちゃんと作品をはじめ色々なものに目を向けているんだなと思ってくださるようです。
また、今回であればメル・ボックナーの作品に使われている石には非常に興味を持っているけれど、触れることができずご機嫌斜めになってしまっている子どもの姿を目にすることもありました。その場合には、同作の鑑賞を無理強いするのではなく、他のスペースで別の作品を見ることを促したり、他の参加者より早めに講堂に戻り一緒に絵本を読むなど、その子のその日の美術館の楽しみ方を見つけて過ごしています。

展示室での活動を終え、簡単なふりかえりと最後の絵本よみを講堂で行い、プログラムは終了となりますが、保護者にアンケートを記入いただいている間も「美術と絵本を考える会」のみなさんは子どもに絵本よみをしながら、子どもの様子を最後まで見守ります。

子どもと保護者のペースに合わせた、これらのサポートによってまた参加したいと思ってもらえるようなプログラムになっていることは、プログラム終了後も和やかに「美術と絵本を考える会」のみなさんと話し続ける保護者の様子が物語っています。
子どもを連れての美術館への来館に戸惑われている方もぜひ、本プログラムをご活用いただき素敵な美術館体験をしていただければと思います。

ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました!みなさまのご来館をお待ちしています。[K.Y]

---
2023年5月10日(水)1)10:30〜11:50 2)13:15〜14:35 3)15:00〜16:20
対象:0歳~未就学の乳幼児とその保護者
定員:5組10名
---

PAGETOP