4月23日に「こどもびじゅつあー」、「びじゅつあー」、「だれでもびじゅつあー」を開催しました。今回は計15組33名にご参加いただき、地下2階で開催している「コレクション2 特集展示:メル・ボックナー」を鑑賞しました。
展示室で鑑賞する前のウォーミングアップとして、講堂でこれから見る作品を数点スクリーンに映しながらスライドトークを行います。このスライドトークでは、まず作品の画像を見て、それぞれが気づいたことを参加者に話してもらいます。
小学1年生から4年生とその保護者を対象としている「こどもびじゅつあー」では、《セオリー・オブ・スカルプチャー(カウンティング)》(1969-72年)を見ると、すぐに手を挙げて「ピラミッドみたい」と並べられている石の様子を自分が知っているものに例えて話していました。ほかにも《セオリー・オブ・スカルプチャー(十)》(1972年)を見ると多くの人が「数字の10に見える」と答えるなか、「旗」「顔」「魚」など別の意見もあり、それぞれの人によっての見え方の違いが垣間見えました。また、《セオリー・オブ・スカルプチャー(四つの五つ)》(1972年)のうち、丸い円の中に石が5つ置かれたり、同じような円の中に石が1つも置かれてなかったりする作品の写真が映し出され、「人の顔に見える」という意見が出ると、「石がからあげに見える」「おなかがすいてきた」など、ほかの人の意見を聞いて自分が連想したこと、思ったことを次々に話していました。時には、写真を見て「なんか面白い」という、作品全体から受ける印象を話す参加者には、スタッフが「どうしてそう思ったのか」いう問いを投げかけ、直観として自分が感じたことが、作品のどの部分に起因するのか考えてみることを促しながらトークを進めることもありました。
スライドトークのまとめとして、メル・ボックナーの作品の鑑賞のポイントが、数や数えることであると伝え、「数って何だろう?数えるって何だろう?」「どうしてこのように石が並んでいるのか、なぜだろうと思って、考えてみてほしい」とお話ししました。
スライドトークによって、どんな作品が展示されているか、作品を鑑賞するときにどんなところに注目するとよいのかということを全員で共有することができ、展示室で実際に作品を前にしたときのより深い鑑賞につながります。
メル・ボックナーの作品が並ぶ展示室では、作品の配置図が掲載されているワークシートを持ち、鑑賞した際の気づきを記入していきました。また、タブレットを「こどもびじゅつあー」と「びじゅつあー」では、子どもと保護者で一台、年齢問わず参加できる「だれでもびじゅつあー」に参加している大人は一人一台持って、メル・ボックナーの作品のなかで気になる作品をいくつか撮影しました。
小学5年生から中学3年生とその保護者を対象とした「びじゅつあー」では、印象的な保護者と子どもがいました。スタッフが気に入った作品について聞くと、《セオリー・オブ・スカルプチャー(面)》(1972年)と答えた6年生の女の子。その理由を尋ねると、「面というタイトルなのに、面(柱の側面)に石が置いてあるのは1つだけ。ほかの2つは点(柱の角)に石が置いてあるのが不思議だと思った。」と教えてくれました。その作品をタブレットで写真を撮ろうとすると、どの角度からも3つすべての石を写すことができないことから、パノラマ機能で撮るのはどうかと試行錯誤をしている様子が見られました。そして動画で撮るという方法を思いつき、柱の周りをぐるっと回って、3つの石すべてが映った動画を撮りました。一方、保護者は、《セオリー・オブ・スカルプチャー(三つの石/三つの間)》(1972年)を見て、何やら浮かない表情でした。話しかけて理由を聞くと、「石の並べ方が一見すると整然と並んでいるように見えるが、よく見ると数字の向きが逆だったりで、モヤモヤする」とのこと。先ほどの6年生の女の子は、石の置かれている理由がわからないから面白いと感じ、保護者は理由がわからないから好きでないと、同じ作者の作品を見て、保護者と子どもで異なる感想を持っていました。また、同じ回に参加した別の保護者と子どもに話しを聞いてみると、「同じ作品を見て、子どもに思ったことはあるかと聞いてみたら、自分が思いもしない答えが返ってきて驚いた」とお話しされていました。
30分ぐらいの展示室での鑑賞を終えると講堂に戻り、石の数を数えたメモや気が付いたことを記入したワークシートと、タブレットで撮影した一番気になった作品の写真を書画カメラでスクリーンに投影しながら、それぞれの参加者の作品に対する気づきを全員で共有しました。ワークシートを見ると、参加者が展示室でどの作品に注目をして、どんなことに気がつき、どんなことを考えていたのかを見て取ることができました。そして、《セオリー・オブ・スカルプチャー(カウンティング)》の21作品のなかから、参加者に一番気になった作品を選んで紹介してもらいました。「こどもびじゅつあー」と「びじゅつあー」では、それぞれが別の作品を選んでいました。「だれでもびじゅつあー」では、2人が同じ作品を選んでいましたが、タブレットを構えたアングルの違いから、作品を見る角度、空間の切り取り方がその人によって違うということがわかりました。「だれでもびじゅつあー」に4人で参加されたご家族の保護者からは「石の数に注目したり、石の色に注目したり、作品を見る年齢で感じるものが違うと思った」という感想がありました。
各回とも参加者による発表を聞くと、鑑賞する前のスライドトークでスタッフからお話しした「数を数えること」というキーワードをそれぞれが意識して作品に向き合い、じっくり見ながら参加者一人ひとりが自分なりの答えを探し、人によってはさらに思考を巡らせて新しい問いを立てて考えることができていたということが見て取れました。
ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました。またのご参加をお待ちしております。[F.A]
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2023年4月23日(日)
1)11:00〜12:00 こどもびじゅつあー 対象:小学1年〜4年生とその保護者 定員:5組10名
2)13:30〜14:30 びじゅつあー 対象:小学5年生〜中学3年生とその保護者 定員:5組10名
3)15:30〜16:30 だれでもびじゅつあー 対象:どなたでも 定員:10名
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