国立国際美術館

HOME学び・体験活動レポート・日記「オンラインではなしてみる」

みる+(プラス)

「オンラインではなしてみる」

2022年9月4日(日)

9月4日にみる+(プラス)「オンラインではなしてみる」を開催しました。

全国から見えない・見えにくい方6名、見える方1名がオンラインでつながり、10月22日から開催される「すべて未知の世界へ ― GUTAI 分化と統合」(2023年1月9日終了)の出品予定作品から、当館所蔵の3作品を見ました。

最初に「みる+(プラス)」という当館主催のユニバーサルプログラム自体の趣旨と、今回のプログラムでは、「みる」以外に「話す」や「聴く」をプラスして会話し、見えていることや感じていることを言葉にして伝え合う交流、そしてさまざまな見方、感じ方、考え方を持ち寄ることで、一人では持てない作品イメージを膨らませる創造の時間を大切にしたい、とスタッフからお伝えしました。

続いてウォーミングアップとして、自己紹介の時間を設け、お名前、居住地、各自の置かれている状況、参加理由のほかに、事前に質問していたお題「『誰も作ったことがない作品を作って』と言われたらどんな作品を作ると思いますか?」について、「音楽、風、冷たいなど、見えない人も、聞こえない人も、認知症の人も作品に関われる、鑑賞できる作品」等、みなさん色々なプランを話してくださいました。

さて、1つ目の作品は、吉原治良《無題》(1963年)です。最初は見える方が突然の抽象画に戸惑いながら、見えているもの、気づいたことについてお話しします。そこに見えない方から「画面は何色?」「画面の真ん中に円がある?」という質問や確認があったり、見えにくい方からは、線について「おたまじゃくしの軌跡のよう。飛んだり、迷ったり、つーっと泳いだように見える」というお話等、何が見えているか、またそれについてはどのように見えるかなど、それぞれの見方、感じ方について会話を重ねていきました。他の参加者のお話を聞いている中で、「楕円の中のブラックホールの中に悩み、怒り、苦しみを閉じ込めたように感じる」とイメージを膨らませていく方もいました。

続いての作品は、白髪一雄《天雄星 豹子頭》(1959年)。こちらの作品では、まずは印象ではなく、何が描かれているかを具体的にお話ししていきました。赤、紺、黄色が画面一面に広がっていること、色の重なり方に注目していく内に、参加者のみなさんそれぞれの絵のイメージが生まれていきます。色が混じりあっていることから、「人間の混沌とした感じ」と発言される方がいたり、どのような絵なのか聞いている内に、描いた時の作家の年齢や描き方が気になるという方もいました。

最後の作品は、田中敦子《地獄門》(1965-69年)です。縦長の画面一杯に大小様々な円がカラフルに描かれ、円と円をつなぐ線が複雑に絡み合っています。同心円状に重なる円について「上から見たコマのような感じ」、円の中に小さな円が描かれている部分について「クレヨンを上から見たような感じ」等、思ったことを発言していきます。見えにくい方からは、画面をよく見てみると、「神経網を拡大した感じ」、「インターネットのネットワークみたい」という言葉も出てきました。

みなさん沢山お話ししてくださり、あっという間にプログラムが終了しました。最後の感想では、「誰も作ったことがない作品」のお題について、見えない方から「視力が0.02以上の人は見えない作品を作ってみたい。自分が今味わっている感じを、見えている人にも感じてもらいたい」という声も上がりました。
今回は、見えない方、見えにくい方、見える方で開催しましたが、当然、見えない方同士でも、見えにくい方同士でも、どのように作品を見て、楽しみたいかは、それぞれ異なります。終了後のアンケートでも、さまざまな感想が寄せられますが、すべてのご意見にしっかりと耳を傾け、次につなげていきたいと思います。

10月22日から開催される「すべて未知の世界へ ― GUTAI 分化と統合」展では、今回とは異なる「プラス」を用意して、どなたでもご参加いただける「みる+(プラス)」を 10月下旬以降、美術館で開催する予定です。ぜひご応募、ご来場ください。[S.S]

---
2022年9月4日(日)
13:00〜15:00 みる+(プラス)「オンラインではなしてみる」
定員7名
---

PAGETOP