国立国際美術館

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HOME美術館について館長メッセージ新型コロナウィルス蔓延による休館、再開について

再開に当たって

 新型コロナウィルスの蔓延のために、当国立国際美術館も2月29日から閉館をいたしております。そうしたなかで一方では、5月に入り感染者数の漸減が見られ、緊急事態宣言下にある大阪も社会活動の復活をさまざまな分野で探り始めております。大阪府下にある当美術館も、美術館としての本来に役割を果たすことの重要さを認識しつつ、地域の動きと足並みをそろえながら再開の可能性の検討を続けてまいりました。「大阪モデル」を踏まえ休止要請が解除されるようになった今日に到って開館の条件が一定程度整ったと判断され、当美術館は6月2日に開館することにいたしました。
 しかし、新型コロナウィルス感染の恐れがいまだ強い状況の下では、制約をすべて解いて通常通りに開館するわけにはまいりません。感染症拡大の予防策を慎重に施すことが不可欠であるために、来館者の皆様には、多くのご不便をおかけすることになります。感染症対策の趣旨をご理解され、再び巡ってきた美術鑑賞の機会を十分楽しんでいただけるよう心から願い、この困難な状況を共に乗り越えていきたいと祈念いたします。感染予防によく配慮されて「ヤン・ヴォー -ォヴ・ンヤ展」をどうかお楽しみください。

国立国際美術館館長 山梨 俊夫
(2020年5月18日)

美術館ができること
――新型コロナウィルス緊急事態下の臨時休館に当たって

 新型コロナウィルスの蔓延のため緊急事態宣言がなされ、社会全体が息を詰めることを余儀なくされています。事態の改善、終息はいまだに予測がつきませんが、この悪疫に日夜懸命に立ち向かっておられる医療に携わる方々、日常生活を支える様々な仕事に携わる多くの方々に、大きな謝意を表するとともに、皆さまがこの危機を無事脱することを切に願っております。
 私ども国立国際美術館でも、この状況に鑑み、感染拡大の防止に努めるべく、当面の間休館しております。そのために皆さまには美術を楽しむ場を奪う次第になり大変ご迷惑をお掛けし、私どもも美術館の存在理由の半ばを危うくする事態に陥っています。その一方では、再開を期し様々な準備を進めております。
 例えば、4月4日から公開を予定していたヤン・ヴォー展は、陳列を整え再開に備えています。ヴェトナム戦争の混乱から家族でデンマークに移住し、いま世界的に活躍を広げている、現代美術の旗手の一人ヤン・ヴォーの展覧会では、日本国内、ヨーロッパのあちこちから作品を借り受けています。しかし日本以上の新型コロナウィルスの拡大のために作品輸送が滞り、一時は展覧会そのものの実現が危ぶまれましたが、関係者の懸命な努力で作品がどうにか到着して、陳列にこぎつけることができました。
 皆さまも様々な方面で感じられているとは存じますが、現代は、こうして展覧会一つを例にとっても、ひとたび連携の網がほころびれば、たちまち混乱が引き起こされます。国内は言うに及ばず世界中の国々との直接的な繋がりは欠かすことができません。今回の展覧会では、折よく作家のヤン・ヴォー氏が、海外渡航の制限が始まる以前に日本に来られ滞在していましたので、彼とともに準備作業を進めることができました。ヤン・ヴォー氏は展示作業の終わった後、どうにか帰国できるめどが立ちました。
 こうして現代を生きる作家たちにとっては、自らの生にかかわる出来事、歴史的な事件の一つ一つが彼らの課題となって、それぞれの思索と制作に組み込まれていきます。新型コロナウィルスが世界中にもたらしている深刻な状況もまた、人間社会への影響や意味を様々に問われ、現代の美術作家たちの仕事に大きな影を落としていくと思われます。そしてその意味の繋がりは、作家たちをはじめ無数の人々が脈々と血を通わせる大きな網となって、瞬く間に世界中に広がっていきます。現代の美術は、そうした網で織られていて、絶えず時代と共に生きています。そうした時代の中で、この大きな網を流れる作家たちと人々の生を結ぶことが美術館の大事な役目となっています。
 新型コロナウィルスに起因する緊急事態のためにその役目を十分に果たせないのは、残念の極みであり、皆さまには心底申し訳なく慚愧の念に堪えません。

 皆さまの美術に対するご関心にこたえるために、休館中に及ばずながら、国立国際美術館の活動の一端を知っていただこうと考えました。例えば、これまでに当館の事業に参加してくださった現代の作家たちのインタビュー動画などが、You Tubeの国立国際美術館のチャンネルに登録されておりますので、ぜひご覧いただきたく思います。
 ヤン・ヴォー氏については、短時間の展覧会紹介ビデオが同じく当館のYou Tubeチャンネル上でご覧いただけます。また、ヤン・ヴォー氏のご協力を得てインタビュー録画を現在製作中ですので、動画登録の際には当館のSNS等を通じてご案内いたします。
 また、2018年に開催された当館の開館40周年記念展「トラベラー まだ見ぬ地を踏むために」に参加した大竹伸朗氏、笹本晃氏、藤井光氏、ピピロッティ・リスト氏、カリン・サンダー氏ら10名の作家たちのインタビュー動画、当館で個展をされた森村泰昌氏による展示紹介ビデオ、作家グループ「プレイ」の記録、ウォルフガング・ティルマンス氏による展覧会紹介などもお楽しみいただけ、現代の作家たちがどんな考えを抱きながら仕事をしているのかを理解していただく一助になることでしょう。

 また、20世紀以降の美術を中心とした当館のコレクションについては、学芸研究員が代表的な数点をウェブ上で紹介するビデオを鋭意作成中ですので、こちらも完成次第SNS等でご案内します。
 同時に国立美術館では「所蔵作品総合目録検索システム」を通じて各館が所蔵する作品の情報を公開しています。当館のコレクションも作家名や作品タイトル、制作年といった作品に関わる基本的な情報に加え、来歴(作品所有の変遷)や展覧会歴(過去にその作品が出品された展覧会情報)、参考文献といったその作品を知るために重要な歴史的な情報などをご覧いただけます。当館にどのような歴史を持つ作品がコレクションされているのか、ぜひご自宅のパソコンなどからアクセスしていただければと思います。

 緊急事態が緩和され、社会の活動が落ち着き、そして美術館が再開されるのを、皆さまとともに心待ちにしながら、美術館の社会的な役割に改めて思いを届かせ、美術館活動の充実に一層の努力を傾ける所存でおります。再開の暁には再び、ゆっくりと美術にひたり楽しまれるよう皆さまの来館を心よりお待ちいたしております。そして何よりも、新型コロナウィルスの感染にご留意され、健康で過ごされるよう祈念いたします。

国立国際美術館館長 山梨 俊夫
(2020年4月17日)

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