国立国際美術館

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学校団体鑑賞

堺市立土師小学校

2024年10月3日(木)

10月3日に堺市立土師小学校の5年生66名が来館しました。

最初に、地下1階講堂でオリエンテーションを行いました。先生方との事前打ち合わせをもとに、学校ごとに作成しているデータをスクリーンに投影して、当館の成り立ちや建物を紹介した後、地下1階と地下2階で展示されている恒久設置作品と特別展示作品(※)について、作品画像を見て気づいたことなどを子どもたちに質問しながら紹介しました。ジョアン・ミロ《無垢の笑い》(1969年)の画像が映ると、子どもたちから「目みたい」「(絵に描かれているもの)1個1個が丁寧に描かれている」と、作品の中に描かれているものや描き方に対する発言がいくつかありました。ある子から、「1枚の板ではなく、いくつもの板がある」と、画像を見ているだけでも、当作品が多くの陶板が合わさってできていることを見抜いているかのような発言が飛び出すと、他の子たちも改めて画像をじっと見て、「あー」と納得する声が上がりました。事前打ち合わせで決めていた、鑑賞サポートツール『アクティヴィティ・シート』の「紹介文づくり」の取り組み方についても紹介しました。「紹介文づくり」は、作品の第一印象、作品を観察して見つけたこと、気づいたこと(客観的な事柄)、そこから自分が感じたこと、考えたこと(主観的な事柄)を順番にシートに記入して、最後にそれらをまとめて作品の紹介文を書くというアクティヴィティです。ヘンリー・ムア《ナイフ・エッジ》(1961/1976年)を例に、上記の段階を踏んで、選んだ作品の紹介文を書く方法を伝えました。アクティヴィティの意図としては、上手な紹介文を書くことではなく、そのステップを通して、主観だけに頼ることなく、作品を細かく観察していくことにあります。

オリエンテーション後には、子どもたちの多くが、『アクティヴィティ・シート』の紹介時に例として取り上げた、地下1階の改札横に展示されている《ナイフ・エッジ》の前に集まっていました。高さ約3.5mもの作品の大きさについて、「(作品画像を見て)先生の身長と同じくらいだと思っていたけれど、こんなに大きいなんてびっくりした」と、作品画像から想像していたことと、実際に鑑賞した際の違いに驚きながら、鑑賞していました。
地下2階では、初めは決められた班ごとに作品を見て回っていましたが、『アクティヴィティ・シート』に取り上げる作品を決めてからは、友達同士もしくは1人で、じっくりとアクティヴィティに取り組む姿が見られました。高松次郎《影》(1977年)を選んでいた子は、最初は「スクリーンに映している」と思ったようです。しかし、作品を見ているうちに描かれた影であることに気づき、さらに見ていく中で、影の色の濃淡や影の大きさの違いなどについて次々に発見していったようで、そのことを『アクティヴィティ・シート』の「見つけたこと、気づいたこと」の欄に書いていました。中でも、作品中央部の女性の影だけが二重になっていることが気になったようで、「感じたこと、考えたこと」を書く欄に「真ん中の女の人の影だけ二つなのは、作家が何か意味をもたせているかもしれない」と記入していました。須田悦弘《チューリップ》(2006年)を選んだ子は、最初は「バラ」と思ったようでしたが、「とげがない」「葉っぱに穴がある」「宙に浮いている」と作品をよく観察して発見したことを次々に書き、その上で「葉っぱはチューリップだけど、花はバラみたい」とチューリップの花びらがバラのように広がっているところもよく見て、美術館スタッフに話してくれました。《無垢の笑い》を選んだ子は、第一印象として「へんな動物の絵」だと思ったようで、観察する中で陶板の枚数を数えて640枚あることがわかると「めっちゃ多い」と言い、さらに作品の中に33個の丸があることを発見していました。その隣でアレクサンダー・コールダー《ロンドン》(1962年)を見ていた子は、陶板の数を数えていた友達に触発されたのか、モビールの赤い金属板の枚数を数え始め、数えているうちに、作品をよく見たのか、「(モビールの板と軸が)矢に見えてきた」と美術館スタッフに話しました。
その他の子どもたちも、自分が気になった作品を、時間をかけてじっくり見ている様子が多く見られました。それぞれの『アクティヴィティ・シート』を見せてもらうと、発見したことだけではなく、そこから自分が考えたこと、感じたことが熱心に記入されていました。鑑賞時間は30分ほどでしたが、小学5年生が取り組むには少し難しい「紹介文づくり」にチャレンジする中で、自らの第一印象からスタートして、客観的事実をもとに自分が考えたことや感じたことをさらに導き出せたからこそ、より深い作品鑑賞につながったのではないかと思います。

堺立土師小学校のみなさん、ご来館ありがとうございました。またのご来館お待ちしています。[F.A]

※ 地下2階では、展示室内整備・修繕のため、コレクション展を開催していませんが、展示室の一部では、近年の収蔵作品と恒久設置作品を6月4日から10月6日まで展示しています。

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