3月23日、24日にびじゅつあーすぺしゃる「古代メキシコの世界をたんけん! オリジナルのマヤ文字グッズをつくろう」を開催しました。小学生とその保護者を対象に実施し、1日目に25組64名、2日目に28組77名、あわせて53組141名が参加しました。
「びじゅつあーすぺしゃる」では、各種「びじゅつあー」で行っている作品鑑賞に、簡単な制作活動などを加えることにより、展覧会での鑑賞体験をふりかえったり、作品を見て感じたこと、考えたことなどを深めたりすることを目的にしています。
今回は、「古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン」展(2月6日〜5月6日開催、以下、古代メキシコ展)に関連させた内容で実施しました。本展で紹介しているテオティワカン文明、マヤ文明、アステカ文明のうちのマヤ文明、その中でもマヤ文明の特徴の一つである「マヤ文字」に注目し、展覧会鑑賞後に、自分の名前を表すマヤ文字が入った世界に一つしかないキーホルダーをつくりました。
参加方式は、会場が混雑しがちな古代メキシコ展を参加者のペースで存分に鑑賞できるよう、事前に申し込んだ参加者が受付時間内の好きな時間に来て参加できる、申し込み制立ち寄り式を採用しました。
参加者は、地下1階の講堂でプログラムについての簡単なレクチャーを受け、本プログラムオリジナルのワークシートを持って展覧会場に出発します。ワークシートでは、古代メキシコの三つの文明について、表面は小学生向け、裏面は保護者向けに紹介し、また、文明ごとに2~3点の作品を選び、鑑賞するときのきっかけとなるような質問を表面で投げかけ、裏面でそれらの作品について簡単に紹介しました。
ワークシートに掲載されている作品を探しながら展示室を進み、該当作品を見つけると「あったよ!」と小学生と保護者同士で声をかけあっている姿が見られました。また、掲載作品以外にも、気になった作品を熱心に見ている様子もあり、中には作品1点1点の前で立ち止まり、1時間以上かけて展覧会をじっくりと鑑賞している参加者もいました。
鑑賞後は、講堂で参加者とスタッフで見てきたことを共有しました。「どんな作品を見つけた?」「気に入った作品はあった?」などの問いかけに、子どもたちは「ドクロがあった」「マヤ文字がたくさんあった」などと答えてくれました。その後、まずは、マヤ文字についての簡単なレクチャーで、マヤ文字の特徴として、一つの四角のマスの中に複数の文字の要素が組み合わさってつくられていること、その組み合わせや配置は書き手によって変えられることを伝えると、自分たちが使う漢字との違いに、参加者から驚きの声が上がりました。
次に、制作の流れについて説明を受けた後、参加者は紙に書いたマヤ文字を入れるアクリルキーホルダーの形と大きさを4種類(四角形・大、四角形・小、丸形・大、丸形・小)の中から選び、いよいよ自分の名前をマヤ文字で書いていきました。まず、ワークシートに自分の下の名前をひらがなで書き、そのひらがなの音に対応するマヤ文字を選んで書きます。(※)すべてのマヤ文字が出揃ったら、それらがすべて一つの四角のマスの中におさまるようにデザインしていきました。それぞれの文字を大きさも向きも自由に変えて配置できることによって、たとえ同じ名前であっても、そのデザインは幾通りも考えることができます。今回、参加者はそれぞれの文字をどの場所にどのように配置するか3パターン考え、一番気に入ったデザインを自分の名前のマヤ文字として決定しました。
次の工程では、自分の名前のマヤ文字をトレーシングペーパーに書き写し、アクリルキーホルダーの中に入れる紙を仕立てていきます。今回はクレヨンエッチング(もしくはクレヨンスクラッチ)と呼ばれる技法を使いました。画用紙にクレヨンで黒以外の色を自由に塗ってから、それらを全て覆うように黒で塗りつぶします。その紙にマヤ文字を書いたトレーシングペーパーを重ねて、鉛筆で自分の名前のマヤ文字の線をなぞると、黒のクレヨンが削れて、その下からカラフルな色が見え、最終的にマヤ文字が浮き出てきます。この技法の面白さは、自分の思いもよらない色がエッチングによって浮かび上がるところにあります。そうした偶然性によって生まれたマヤ文字を見て、予想を上回るできばえに歓声を上げる参加者もいました。最後には、裏面として入れる紙も用意します。今回は、当館のロゴが印刷された紙や、色紙、古代メキシコ展のチラシなどの中から好きなものを選びました。両面の紙のサイズを最終調整し、アクリルキーホルダーにおさめたら、世界で一つだけのオリジナルのキーホルダーの完成です。
できあがったキーホルダーは、複雑なマヤ文字も四角のマスの中におさまるように根気強く書かれていたり、文字の大きさや配置を変えてデザインが工夫されていたり、同じ工程を踏んでいても、言葉の通り、一つも同じもののないオリジナリティに溢れたものばかりでした。表面に自分の名前のマヤ文字を、裏面に好きな野球選手の名前のマヤ文字を書いたり、裏面は何種類かの紙をコラージュしてデザインしたり、それぞれが思い思いに、自分だけのキーホルダーづくりを楽しむ姿が見られました。
完成後には「自分の名前のマヤ文字を書くのが楽しかった」「自分だけのキーホルダーをつくれたのが嬉しい」という、このプログラムを楽しんでくれたことが分かる感想を聞くことができました。また保護者からは「(普段自分たちが使っている文字ではなく)はじめての文字にふれるきっかけになってよかった」「家族みんなで楽しめた」といった感想を聞くことができました。完成したばかりのキーホルダーを展覧会場で購入したグッズに付けている参加者もいました。
今回のプログラムが、なんとなく聞いたことはあったけれど、よくはわからないという人が多いであろうマヤ文字を通して、古代メキシコの世界を想像するきっかけとなっていれば嬉しいです。ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました。 [F.A]
※ 本プログラムでは、五十音に対応するマヤ文字について、以下の書籍を参照しました。
八杉佳穂『マヤ文字を書いてみよう読んでみよう(新装版)』(白水社、2019年)
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2024年3月23日(土)、24日(日) 受付時間:10:30~15:00(制作は17:00まで)
対象:小学生とその保護者 定員:各日40組80名
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