第26回中之島映像劇場 「空、境界のない」
第26回中之島映像劇場では、韓国国立現代美術館[MMCA]の企画協力を得て、5人の韓国系女性作家による短編作品の上映を行います。多様な地域と時代を捉える5本の作品は、境界と移動という共通のテーマでつながっています。
扉をひらくのは、アン・ユリ(1983年生まれ)の新作《接木された言葉、排除された名前》(2023年)です。アンは、帰化試験で出題される問題の形式を借りて、韓国社会における差別と嫌悪、そして共生の可能性を問いかけます。キム・セジン(1971年生まれ)の《熱望への接近》(2016年)は、椅子、島、トルティアをめぐるエピソードを通して移民現象とその背後にある資本主義の力学を浮き彫りにします。オープンソースのイメージとサウンドを活用した制作の方法論と地球規模の移民問題という主題との関係性が印象的です。他方、キム・ソヨン(1961年生まれ)は、映画監督として国内の映画館と映画祭で作品を発表してきました。キムの《雪の心:以後》(2016年)は、朝鮮半島から沿海州、シベリア、中央アジア各国に至る集団移住の歴史を追跡したドキュメンタリー映画「亡命三部作」を展示形式で拡張させた作品です。
第2部の《一つもしくはいくつもの山の物語》(2017年)の中で、ジェーン・ジン・カイゼン(1980年生まれ)は、遥か遠いユーラシア大陸と朝鮮半島の境にある山を中心に、重なり合う複数の神話、言語、人間と自然を描きました。現代の韓国を起点に出発した今回の上映会は、半島と列島の間で異なる人々の記憶の中を流れてきた、ある歌の軌跡をたどる、ナム・ファヨン(1979年生まれ)の《イムジン河》(2017年)で結ばれます。歌の軌跡は、それに導かれた作家自身の旅程でもあります。
「空、境界のない」は、日本と韓国の間で継続されてきた約半年間の対話の中から構想されました。5本の作品を見た後に、ゲスト(イ・スジョン:韓国国立現代美術館|Film & Video部門担当学芸員)とともに、観客のみなさんと対話を続けていくことができればと思います。
- 主催
- 国立国際美術館
- 協賛
- ダイキン工業現代美術振興財団
- 企画協力
- 韓国国立現代美術館[MMCA]
- 定員
- 100名(全席自由、先着順)
- 開催日
- 2024年3月17日(日)
プログラム
【第1部】
アン・ユリ《接木された言葉、排除された名前》(2023年、11分22秒)
キム・セジン《熱望への接近》(2016年、16分50秒)
キム・ソヨン《雪の心:以後》(2016年、16分56秒、MMCAコレクション)
対話(日韓逐次通訳付き)
【第2部】
ジェーン・ジン・カイゼン《一つもしくはいくつもの山の物語》(2017年、21分52秒)
ナム・ファヨン《イムジン河》(2017年、24分16秒)
対話(日韓逐次通訳付き)