3月8日に「ちっちゃなこどもびじゅつあー 〜絵本もいっしょに〜」を開催しました。
「コレクション2 特集展示:メル・ボックナー」(以降、コレクション展)が開幕してから初めて開催となる今回は、1日に3回開催し、16組35名にご参加いただきました。(※1)3回目は大阪府「こめっこ」プロジェクトのご協力のもと、子どもの手話の力を育む「こめっこ」による手話での絵本よみ、美術館体験を行いました。(以降、こめっこ回 ※2)
本レポートでは、プログラム中の参加者の様子を中心にお伝えします。
今回は、メル・ボックナー作品にあわせて、「美術と絵本を考える会」のみなさんに「数」をテーマに絵本を選書していただきました。いつも、大阪国際児童文学振興財団のご協力を得て、約50冊の候補絵本から、テーマの適切さ、年齢、文字の量、全体の長さなどを考慮し、選んでいます。1・2回目には『いちじく にんじん』(大阪YWCA千里子ども図書室/案 ごんもりなつこ/絵、福音館書店、2012年)、『ひょっこり ひとつ』(佐々木マキ/作、福音館書店、2016年)、鑑賞後の振り返りでは『1はゴリラ かずのほん』(アンソニー・ブラウン/作、さくまゆみこ/訳、岩波書店、2013年)、こめっこ回では『1はゴリラ かずのほん』と『ひょっこり ひとつ』の絵本よみをしました。
1・2回目の『いちじく にんじん』では、保護者も一緒に手遊びしながら歌を歌い、一気に緊張もほぐれ楽しい雰囲気になりました。すべての回で紹介した『ひょっこり ひとつ』は、絵本の言葉を読み上げるだけだと3分程度の短い絵本ですが、こめっこ回では、絵本の文章にはない情景や登場人物の様子を丁寧に手話で伝えるので、絵本の中により入り込んだような臨場感のある絵本よみとなり、きこえる参加者も手話を真似しながら楽しむ姿が見られました。
絵本よみで気持ちもリラックスしたところで、今回鑑賞する作品についてスライドトークでウォーミングアップしていきます。コレクション展に展示しているメル・ボックナー《セオリー・オブ・スカルプチャー(カウンティング)》(1969-72年)がスクリーンに登場するとお話しする子どもは「石だ!」と即座に反応していました。次に石の並びに着目し「クリスマスツリー」と知っているものに見立てたり、石だけでなくチョークで描かれている丸なども含めて観察し「人の顔に見える」と話す子もいました。お話しする前の子どもの中には石と気づくなり、スクリーンに向かって歩み寄り触ろうとする姿も見られ、それぞれすでに作品との対話が始まっているようでした。作品に関する情報を保護者にお伝えするかしないかは、紹介する作品によって異なりますが、参加者の反応を受けつつ、スタッフからこれらの作品が「数」にまつわるものであることを少し伝えて展示室へと進みました。
展示室の入口付近で、作品の配置など、会場内の様子を説明していよいよメル・ボックナー作品とご対面です。いずれの参加者も石に触りたい様子で、自ら歩きたいと意思表示する子や抱っこ紐の中で、外に出たいのか、常にお尻がつっぱっている子もいました。抱っこしている保護者は、そのお子さんの様子から子どもの意思を感じていらっしゃるようでした。
こめっこ回では、作品鑑賞の冒頭でメル・ボックナー作品の前でこめっこさんによるトークを行い、しばらく自由鑑賞した後、もう一度集まってトークを実施しました。トークの中では、参加者とともに見えている事実に基づき話し、石の数を数えたりしながら、作品にとって大切な「数」という概念、「数える」という本質に迫っていました。参加者全員を引き込むトークは、参加者ではない一般来場者も大いに魅了していました。
鑑賞後の講堂での振り返りでは、展示室での体験や他の参加者の意見を聞くことにより、スライドで作品を見ていた段階からの感じ方の変化を実感したり、積極的に自らの考えを話す姿が見られたりしました。
ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました!今回のご参加を機に、また美術館に遊びに来てくださったら嬉しいです。ご来館お待ちしています。[K.Y]
※1 詳しい、プログラム当日の流れはこちらから
※2 こめっこ回についての詳細はこちら
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2023年3月8日(水) 1)10:30〜11:50 2)13:00〜14:20 3)15:30〜16:45(手話での絵本よみ)
対象:0歳~未就学の乳幼児とその保護者
定員:各回5組10名
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