会期:
2012年7月10日(火)~9月30日(日)
20世紀後半における欧米美術の進展の行き詰まりにつづく価値の多様化、1960年代生まれの美術家の仕事の超克、美術情報の氾濫-こうした問題を克服して、真に新しい 美術作品を制作することが、1970年以降に日本に生まれた美術家の課題かもしれません。
「リアル・ジャパネスク」の出品作家9名は、そうした見極め難い美術状況のもとで、欧米美術の模倣、日本美術への回帰、あるいはショーアップした展示への依存など、 近年よく見かける方法とは距離をとっています。この9名の作品は、過去の様々な美術作品や生活の中で経験する物作り等からの柔軟な方法の選択、視覚表現の謎の日本的感 性による探求が主な特徴となっています。そして作品が語りかけることに耳を傾ければ 、私たちが普段気づいていなかった何かに気づかせてくれ、美術表現としての感動をもたらしてくれるでしょう。巨視的に言えば、直面した美術状況への知的で誠実な対応の結果であるにとどまらず、1970年代・80年代に日本に生まれた者としての子供・学校時代の経験をも作品に結びつけています。その意味で「日本の美術作品として意義あるもの」という明治以降の課題のひとつの解答とも見なせるのではないでしょうか。
本展は、日本現代美術の動向を踏まえた上で、そうした作品をふさわしいかたちで位置づけるとともに、今日における美術作品の意義についても考えようとするものです。
【出品作家】
泉太郎 1976年 奈良県生まれ
自ら記録した映像と落書きのような線描を主に用いて、見ることにまつわる人間の意識
の盲点を見事に突く。豊富なアイデアと少年っぽい着眼点が特徴的。
大野智史 1980年 岐阜県生まれ
欧米の絵画言語を国際標準と自覚して研究。絵画表現の謎に本格的に迫る。森林風景・
自画像・抽象画などの特異なテーマは絵画観と身体感覚に由来する。
貴志真生也 1986年 大阪府生まれ
発泡スチロールや角材などを結合した構築物を制作。何かの造形表現ではなく何かを漠
然と想起させつつ構造を読ませる。見させる力は美術の永遠の鍵だ。
佐藤克久 1973年 広島県生まれ
意義のある作品を制作することの難しさをよく知りながら、研鑽を積み重ねてきた。シ
ンプルな技法に、個性が加わった作品群は、無二の自己表現である。
五月女哲平 1980年 栃木県生まれ
色の選択と配置、質感などの基本だけでなく、面の境目や線の揺れなど微細な重要点に
も着目して、身近な外界を描く。鋭敏さが独自の新しさを生む。
竹川宣彰 1977年 東京都生まれ
違和を感じる西洋美術の文脈では作らない。地球儀や生物や出来事など、美術とは別の
豊かな文脈に絡めて作る。東洋人として方法を考え、自己を表現する。
竹﨑和征 1976年 高知県生まれ
スケッチの断片や身近な物による風景的作品を制作。要素の選択は純粋に作者に根ざし
、組合せや配置は大胆で直感的だが絶妙。絶対的な存在感を宿す。
南川史門 1972年 東京都生まれ
遍在する人物や縞や水玉、モダンアートの歴史を踏まえた表現形式。シンプルで斬新な
アレンジには隙がない。南川の生活空間=東京をリアルに伝える。
和田真由子 1985年 大阪府生まれ
馬や鳥など頭の中にイメージした何かを、既成の美術表現技法を用いず、自ら研究を重
ねて、平面または立体として実現する。造形表現の極に果敢に迫る。
泉太郎 バター『捜査とあいびき』展(hiromiyoshii、東京)2010年(参考図版)
©Taro Izumi
大野智史 『The Echo』展(ZAIM、横浜、2008年)での展示風景(参考図版)
©Satoshi Ohno
貴志真生也 主人 (大) 2011年(参考図版)
©Maoya Kishi Courtesy of Kodama Gallery
佐藤克久 カットアウト-ヤマ 2007年
©Katsuhisa Sato
五月女哲平 Saturn 2011年
©Teppei Soutome Courtesy of AOYAMA | MEGURO
竹川宣彰 ナマコシップ 2011年(参考図版)
©Nobuaki Takekawa
竹﨑和征 海景 2010年
©Kazuyuki Takezaki Courtesy of MISAKO & ROSEN
南川史門 乱れ髪、エリカ、緑、黄色 2010年
©Shimon Minamikawa Courtesy of MISAKO & ROSEN
和田真由子 馬 2011年
©Mayuko Wada Courtesy of Kodama Gallery
リアル・ジャパネスク展 アーティスト・トーク
大野智史、貴志真生也、竹川宣彰、南川史門
リアル・ジャパネスク展 アーティスト・トーク
泉太郎、佐藤克久、五月女哲平、竹﨑和征、和田真由子
リアル・ジャパネスク展 ギャラリー・トーク
中西博之(当館主任研究員)
開館時間
午前10時~午後5時、金曜日は午後7時まで (入館は閉館の30分前まで)
休館日
毎週月曜日(ただし7月16日(月・祝)・9月17日(月・祝)は開館、7月17日(火)、9月18日(火)は休館)
観覧料
当日:一般850円/大学生450円
団体:一般600円/大学生250円