会期:
2008年9月27日~11月24日
さまざまなる「肖像」―人物、都市、美術館
コレクション3では「アジアとヨーロッパの肖像 SELF and OTHER」展に合わせて、「肖像」をテーマとします。どれほど美術の捉え方が多様化しても、表現の仕方が変わっても、人間という主題が忘れられることはありませんでした。
「1.近代彫刻に見る人間像」でのマリノ・マリーニの端正な踊り子像の作品は、動きのある緊張感をはらんだ姿勢を保っています。「2.戦後日本の人間像」の池田龍雄の素描には、まるで怪物のような人物像が描かれ、現代社会に生きる人間の歪んだ姿を表現しているようです。
一方、人物そのものを描写しない作品も少なくありません。「3.オブジェに見る人間像」では、身体の一部を断片化したり、増殖したオブジェによって、人間の内側に存在する恐怖や欲望、強迫観念といった感情を喚起させます。また「4.不在の肖像」での古着や戦死公報、穴のあいた椅子などを用いた作品には、人間の生と死のイメージが色濃く投影されています。
「5・6. 欧米の現代美術に見る人間像」では、身近な人物を流動的なタッチで描いた南アフリカ出身のマルレーネ・デュマスの絵画や、ロレッタ・ラックスの不気味な存在感を放つ少女のデジタル加工された写真、動物の血を浴びたマーク・クインの彫刻など、新収蔵品を含めて展示しています。
こうした人物像に加えて、今回は、渋谷の地下水路を撮影した畠山直哉の作品などによる「7.都市の肖像」、美術館という存在それ自体をテーマとした「8.美術館の肖像」など、「肖像」を広い意味で捉えたセクションも設けました。いわゆる肖像画にはおさまらない美術家たちのユニークな表現をお楽しみ下さい。