会期:2003年 1月16日~3月23日
本展は、東京国立近代美術館で1984年以来企画されてきた「現代美術への視点」シリーズの第5回目にあたるもので、同館との共同開催の展覧会であった。
この20年ほどの間に美術も大きく変貌し、新しい世紀をむかえた今日、他の領域同様、転換期にあるといえる。過渡期のざわめきのなか、既存の形だけにこだわらない多くの表現が生み出され、美術の輪郭は確実に流動化している。しかし、新しい展開は既存の形の安易な放棄からではなく、むしろその徹底した消化と内面化の中からこそ、静かににじみ出てくるものではないであろうか。転換期においてこそ、自らの拠って立つ地盤を新たに確認することが重要である。
本展は、「連続と侵犯」というタイトルのもと、美術の歴史に連なりつつまたそこへの侵犯を画策するという困難を正面から受けとめ、転換期のスリルを予感させながら、いま、充実した仕事を繰り広げている10作家の作品を見るものである。それらの作品は、「つくること(creation/fiction)」「コミュニケーション」「共通感覚的体験」という互いに密接に関連し合う3つの観点から選ばれた。出品された作品の方法は、インスタレーション、立体、絵画、写真、ビデオ、音響など多様ではあったが、皆、美術の根源にある、つくること、そして見せることについての深い問いかけの結果としてあり、その開放的なあり方は知的刺激に富み、またさまざまな角度から楽しめるものでもあった。
中でも、ジュリアン・オピーや青木淳は、作品の設置にあたって会場となる美術館空間の特性を考慮にいれるため、1970年の大阪万国博覧会開催時に建設された国立国際美術館の建物の特徴を生かした作品展示となった。それにより、東京国立近代美術館で開催された展覧会の単なる巡回ではなく、東京展とは印象の異なる独自の趣を持った展覧会となった。
出品作家 青木淳、キャンディス・ブレイツ、遠藤利克、ロラン・フレクスナー、ロニ・ホーン、イリヤ&エミリア・カバコフ、ロン・ミュエク、中山ダイスケ、ジュリアン・オピー、高嶺格。