会期:2001年9月13日~10月14日
本展は、日本の現代美術界で重要な役割を担ってきた中堅の作家を紹介する展覧会であった。
戦後日本で現代美術が展開を始めた場として「読売アンデパンダン展」という無鑑査の公募展があった。特に1958年の第10回展以降、篠原有司男や工藤哲巳等の廃物や日用品を利用したような作品によって社会的な注目を集めた。東野芳明が「ガラクタの反芸術」と名付けたその動きは、1960年に入り、篠原が中心となり赤瀬川原平や荒川修作等によって「ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ」として結集し、展覧会の他に街頭パフォーマンスやハプニングをも行った。本展でとりあげた田中信太郎(1940−)が美術界に登場してきたのは、そのような日本の現代美術が熱を帯びた時期であった。高校を卒業して日立から東京に出てきた田中は、その読売アンパンやネオ・ダダに参画し、東野のような美術評論家に早くから注視された。
ネオ・ダダ解散後、田中はジャンクオブジェによる作品から、1965年の初個展でミニマルな表現へと大きな変革を遂げた。そして1968年には「点・線・面」と題された個展を開催した。点としての光源、線としてのピアノ線、、面としてのガラス板によるその展示は、インスタレーションという用語が生まれる以前の日本で最初のインスタレーション作品であり、田中の新たな展開の起点となる作品だった。田中は、その禁欲的でミニマルな表現と、ネオ・ダダで培った過剰とも言える表現主義的な要素の間を往還しながら、独自な展開を遂げた。
本展では、上記の《点・線・面》の再構成作品から、2001年初めの「インド・トリエンナーレ」出品作品に至るまで、田中信太郎の代表的な作品34点によって、内外のムーヴメントから隔絶し、独自な活動を続ける作家の芸術をはじめて本格的に紹介した。