会期:2000年11月2日~12月17日
安斎重男は、1939年神奈川県厚木市に生まれ、70年から現在まで、現代美術の現場を精力的に記録してきた写真家である。リチャード・セラやダニエル・ビュレンらの助手兼記録カメラマンをつとめた1970年の「東京ビエンナーレ」を皮切りに、展覧会が終わってしまうと跡形もなく消えてしまう作品やその場限りの身体行為を果敢にフィルムに収めるようになった。と同時に、ヨーゼフ・ボイスやイサム・ノグチなど数多くの芸術家の魅力的な肖像、パフォーマンスやイベント、国内外の重要な展覧会を取材したものなどその現場をとらえる感覚と力量には国際的にも定評がある。本展では、安斎重男の過去30年の歩みを約 2500点の写真によってふりかえった。現在では安斎の写真でしか見られない歴史的に貴重な記録も少なくない。
また今回は、安斎が近年取り組んできた連作「フリーズ(FREEZE)」の全100点も併せて紹介した。フリーズは、安斎のこれまでのドキュメント写真とは対極にある野心作で、日本の美術家たちを中心にその顔貌を縦1.25m、横1mの印画紙に引き延ばして、フリーズという言葉通り、凍結したイメージを写し出したものである。
本展の開催は、すでに現代美術に親しんでいる人にとってはかつてない規模の回顧となり、若い世代にとっては失われた過去の美術の動向を見直し再認識する絶好の機会となった。また展覧会終了後、当館が発行した図録の記録性を重視して、国内外の図書館や美術館などから問い合わせが相次いだ。なお、同展図録は、2001年の第43回全国カタログ・ポスター展で印刷出版研究所賞を受賞した。