会期:1998年4月11日~5月26日
この展覧会ではフランスの現代作家クリスチャン・ジャカール(1939−)の1970年代から現在にいたる作品約200点を紹介した。具体的にはデッサンのシリーズと、オブジェが中心である。ジャカールにとってデッサンとオブジェとの関係が作品そのものに重要な意味をもたらしているからである。ジャカールは最初、ものの痕跡を追求する仕事を行った後、彼自身が「道具」と呼ぶ作品を制作するようになった。印刷所で拾った紐に布や紙を押し付け、その上に固形の絵の具をこすりつける、いわゆるフロッタージュの技法を用いた作品を制作したのである。同じ時期に制作された立体作品は、黒鉛に染められた大きな綱の塊が壁や床に置かれたものだった。80年代後半からジャカールは安全導火線を使って彼自身が「スュープラ・ノダル(超結節)の概念」と定義した仕事を始めた。綿の紐を用いて、日常的なオブジェを制作したのである。近年ジャカールは同じく白の紐を結節して額の作品を制作している。
本展はフランスのサンテティエンヌ近代美術館が1996年に開催し、その後フランス国内を巡回した展覧会を基本に、多くの重要な作品を加えて企画されたジャカールの日本で初めての本格的な展覧会だった。自己の思考作業をデッサンとオブジェの制作と関連させながら推し進めるジャカールの制作態度は、芸術における精神性の問題を提起した。
なお、本展は愛媛県美術館、三菱地所アルティアムに巡回した。