会期:1996年5月23日~7月7日
李王朝時代(1392−1910)の朝鮮では、生活に根差した造形の分野で優れた伝統が築かれた。本展ではソウル市にある韓国刺繍博物館の所蔵品のなかから、李王朝時代の刺繍作品と、〈包む〉文化のなかで育まれた〈ポジャギ〉と呼ばれる布等、計120点を展示し、これまで知られることの少なかった、布と糸による造形の数々を紹介した。
刺繍は布類の装飾技法として重要な位置を占め、動植物をモチーフとする吉祥文様が、衣装はもちろんのこと、屏風などの室内調度品から小さなポジャギまで、布を素材とするあらゆる品々にほどこされている。また、チョガッポと呼ばれるポジャギは、庶民が余り布を縫い合わせて作ったもので、対照的な色彩を大胆に組み合わせたり、同系色の濃淡で上品にまとめるなど、洗練された色彩感覚が発揮されている。
本展は李王朝時代の色彩豊かな生活文化と、隣国の人々の奥深い生活感情にふれるよい機会となった。