会期:1992年6月27日~8月9日
本展は、近作を個展形式で紹介するシリーズの11回目。今回は1921年(大正10)福岡市生まれの古川吉重を取り上げた。
古川は、1943年(昭和18)東京美術学校油絵科卒業後、作品を独立美術協会展や読売アンデパンダン展と個展などで発表し注目され、1963年(昭和38)ニューヨークに移住した。そして古川は、同地で現在まで30年間も制作し続けている。アメリカの現代美術は、1960年代からニューヨークを基地に世界中へ様々な作風の発信を行った。しかし、その風潮に地元に居ながら惑わされることなく、古川は具象的な作風へは目も止めず、抽象性の濃い平面作品の追及に一貫して精進している。
古川の近作は、モノクロームの一部旧作と同様、絵筆ではなく、スクィージに似た道具を使用してカラフルな抽象画に仕上げているのが特徴である。スクィージは、シルクスクリーンの印刷用具でゴム製やウレタン製であるが、古川は厚手の紙(ラグマット)を用いている。この絵筆に代わる自己流のスクィージに似た道具を用いて古川は、画布の上に数種類の油絵具を何回も塗り重ねて不明瞭な<地>を作り上げ、次いで、この<地>の上に<地>とは異質の、例えば正方形、長方形、一辺が円や三角である長方形などの明快で単純極まりない単色の<形体>を配している。あえていえば、「熱い抽象」の<地>と「冷たい抽象」の<形体>とが醸し出す不可思議な色面構成。本展では、こうした古川の 1992年の作品2点を含む1990年以降の11点を展示した。