会期:1986年 2月21日~4月6日
本展は、オランダ国立クレラー=ミュラー美術館、国立フィンセント・ファン・ゴッホ美術館をはじめとするオランダの公私のコレクションの協力を得て、毎日放送の35周年を記念して開催した。
ファン・ゴッホは多くの劇的な逸話から、一般に「炎の画家」として知られている。しかし、この展覧会の特色は、はじめての試みとして、ゴッホの作品から「宗教」「人間」「自然」という生涯にわたっての基本的な三つの主題を取り上げ、それぞれの中心となるモチーフの扱いを通じて、より客観的にゴッホの芸術を掘り下げようとするところにあった。
「宗教」では教会と農作業を、「人間」では肖像と本のある静物画を、そして「自然」では農園や樹木などをモチーフにした作品によって、人間性と自然に真の宗教を求めたゴッホの姿を浮彫りにしようとしたものであった。
会場は、2階と1階の展示室を使用したが、油絵31点、水彩6点、素描22点、リトグラフ1点の計60点を展示した本展を機会に、悲劇的な生涯に対するものとはまた別の、新たなゴッホ像への関心が呼びさまされたと思われる。