会期:1980年 3月27日~5月13日
当館では内外の現代美術を中心に作品の収集を進めているが、開館して2年半になる館の所蔵作品も、昭和54年度の新収蔵作品によって、常設展示が一段と完成されたものとなってきた。
これら、昭和54年度に新たに収蔵した作品による新収蔵作品展は、二階と三階を会場に87点が展示された。それらのうち、荒川修作の幅15m近い大作《Moral/ Volumes/Verbing/ The/ Unmind/ No.1》は新たに完成した一階展示場内の新設講堂を飾る壁画として展示され、また新宮晋のモビール彫刻《光のメッセージ》(宇部市野外彫刻美術館第8回現代日本彫刻展国際美術館賞受賞)は建物北側の屋外に設置された。新収集のうち版画を含む16点は、昭和53、54年度と続けてきた「現代の作家」展により直接選んだ5人の作家の作品である。また、ニキ・ド・サンファール、ピーター・ブレイクなどは小品ではあるがポップ・アート的な傾向をもつユニークな色彩感のものとして注目された。
当館ではオリジナルな作品に加えて美術作品の複製資料も購入しているが、54年度は前年度と同様写真家の石元泰博に依頼して撮影したモネの大作《睡蓮》(ニューヨーク近代美術館所蔵)の写真を購入し、展覧会では2階全室をこの紹介にあてた。この写真は19点の部分写真と、12.6mに及ぶ原寸大写真から成り、原寸大写真はオリジナル作品と同じように三つのパネルが曲面を成すようなかたちで展示された。このモネ作《睡蓮》の写真は、写真という複製によってオリジナル作品に近い臨場感をつくり出し、同時にオリジナル作品からは肉眼で識別し難い部分の拡大写真を見せることにより、美術作品の複製というものの意義を問う好い機会となった。