会期:1978年11月2日~12月17日
この展覧会は、在外日系作家として、ブラジルを代表する国際的画家として名高いマベ・マナブ(間部学)の初期の具象作品から、最近の抽象作品までを紹介するものとして企画されたものである。
外国で活躍する日本人作家は、戦後、次第に増え、在外作家として現代日本美術の一翼をになう重要な存在となった。東京、京都両国立近代美術館では、再度にわたり「在外作家展」を行って、その存在と意義を明らかにしてきたが、その中で移民としての日系作家については、まだほとんど焦点がむけられていない。というのは移民作家は、移民として苦闘しながら、職種として美術家となったもので、日本の美術界とは全く無関係に生れてきたからである。その意味から、このマベ・マナブ展は、移民作家としての意義を明らかにする重要な問題を含んでいると思われる。
間部は、1924年に熊本で生まれ、10歳のときブラジルへ家族とともに移住している。20代前半より自らコーヒー園を経営する一方、絵画を本格的に描きはじめ、1959年ブラジル美術界の年間総合優秀賞の第1回レイネル賞、第5回サンパウロ・ビエンナーレ国内大賞と受賞を続けた。さらに、アンドレ・マルローに認められ、第1回パリ青年ビエンナーレにブラジル代表として招待され最高賞も受けている。こうして一挙にブラジルを代表する国際的な在外日系作家として脚光を浴び、のちに世界各地の展覧会に招待されるとともに、幾度となく個展も開催している。
しかし、日本では、これまで間部の展覧会が行われることがなかったため、その画業はあまり日本人に知られていない。したがって、4階と3階の展示室を使用したこの展覧会は、間部の初期の具象作品から最近の抽象作品までの画業を俯瞰する画期的なものとなった。ブラジルの大自然と日本的な感性とを巧みに融合させた個性豊かな間部の芸術、100点によって構成された。併せて、ブラジルへの日本移民70周年の一環行事としての意義も持つものであった。
この展覧会は、当館に先立って、8月5日から8月27日まで間部の出身地の熊本県立美術館をはじめ、9月9日から10月1日までは神奈川県立近代美術館でも開催された。
特に、当館ではこの展覧会を開催するにあたって、当館の性格を強調するため、2階展示室に、間部以外の在外移民作家12人の作品も展示し、一般の参考に供した。