日本の美、その色とかたち

会期:1977年10月15日~12月18日

この展覧会は、当館の開館を記念して企画したものである。
日本は四周を海に囲まれた地理的環境にあり、日本の美術は、古来より外国美術の影響を海を越えて摂取し、これを盛んに日本的に消化することを繰り返すことで生成発展してきた。こうした美術の摂取と消化について、時代や地域にこだわらず、日本美術の展開を中心にして、これと外国美術との交流関係を探るところに、当館の性格がある。
したがって、開館記念展は、この国際的な美術の交流を明確にするのに先だち、まずその基点とすべき日本の美術の特質を究めるため「日本の美、その色とかたち」展を開いた。このテーマは、すでに当館設立準備調査会において提案されたもので、日本美術の造形の基本である色とかたち(線、面、組立など)を分析して、それにふさわしい作品を時代や流派やジャンルなどに特にこだわらず、直接、造形上の視点に立脚して自由に眺めようとしたものである。その意味では、従来にない新しい試みであり、造形的な色とかたちは、次のように分析、区分された。

色 華麗な色、繊細な色 うるおいのある墨の色
線 強く清らかな線 柔かで動きのある線
面 装飾的な面 平らで明快な面
組立 俯瞰する見方 機知的な対比
地 素地を生かすつくり

以上の項目に入れ難いが、しかしなお見過すことの出来ない表現がある。例えば縄文土器、土偶、幕末版画などのグロットな生命感をもったものである。これらは、まだ明確に規定し分類することが難しいため、むしろ問題を提起する意味で、次の項目を加えた。
もう一つのあらわれ
生々しい色 うめつくすつくり おどろなかたち

また、以上の各項目にふさわしい美術作品を展示すると同時に、各項目ごとに解説と谷川俊太郎氏による詩を付して、理解の手助けとした。同時に、作品にじかにふれて出てくる情感を重視して個々の作品にはキャプションだけをつけた。その代りに展示室には出来るだけ椅子を多く配置し、椅子の前に解説台を置いた。この方法は、工夫の余地を残しながら以後の展覧会にも引き継がれている。

出品物は、国宝、重要文化財を含む303点で、長期にわたる会期を三期に分け、それぞれ陳列交替を行った。特に『面』の項目の「平らで明快な面」の作品として展示された国宝「源頼朝、平重盛、藤原光能」(神護寺蔵)の各肖像画が、分類の仕方はもとより同一壁面に三幅そろって展示されたのは、珍しいこととして話題を呼んだ。

なお、この展覧会は、日本美の特質を明確にするために、日本の美術だけで構成したものであるが、当館の性格として今後の行き方を示す意味で、『線』の項目の後に、
  参考展示-西の水墨的表現
を加えた。

これは、最近の西洋美術の動きのなかに、その合理的な表現を打開し超越するために、東洋における墨の芸術を中心とした白黒の表現がきわめて同位的な共感をもってあらわれてきている。そうした作例33点を展示して、今後の在り方の参考とした。

  • 入場者:総数28,464人(1日平均508人)
  • 主催:国立国際美術館
  • カタログ:「日本の美、その色とかたち」
    24.5×25.5cm/168ページ/カラー12ページ/白黒72ページ
  • 所蔵図書資料について
  • 友の会
  • キャンパスメンバーズ
  • 学校でのご利用
  • こどもびじゅつあー
  • 出版物
  • ミュージアムショップ
  • レストラン
  • プレスの方へ
  • 寄附のご案内
  • SNS・メールニュース