会期:
2008年4月29日~6月15日
ビデオの技術は、視覚文化に大きな影響を与えてきました。1960年代に登場したビデオ・アートもその一つで、ナム・ジュン・パイクをはじめとするビデオ・アーティストたちは、映画とはまったく異なった映像の可能性に注目し、ビデオならではのさまざまな実験的作品を試みてきたのです。
当初のビデオ・アートにはブラウン管のモニターが、1980年代以降には壁面に映像を投影するプロジェクターが用いられ、さらに近年では平面ディスプレー装置による作品が登場してきました。本展は、そうした技術的な革新とも密接に関係しながら展開してきたビデオ・アートが、いま新たに開きつつある一頁を、プロジェクターに加えて大画面の液晶ディスプレーによる作品によって紹介しようとするものです。
この斬新なプロジェクトのタイトルとして、私たちはあえて"絵画"という伝統的なジャンルを指す言葉を持ち出しました。というのも、本展に出品されるアーティストたちの作品には、絵画と映像という、これまで明確に分かれていた二つの領域の境界を揺るがせ、さらにはジャンルの概念そのものを組み替える可能性があると考えているからです。
今日、映像作品は絵画の展示とほぼ同じ条件のもとに上映することも可能となったように思われます。一般に絵画は静止したままの空間芸術であり、映像は動きのある時間芸術とされていますが、その違いを象徴的に保証してきた暗い劇場と明るいギャラリーの区別が絶対的なものではなくなりつつあるのです。それは単に絵画の精細な複製を映像で見るといったことに終わるものではありません。絵画に動きが介在し、映像に絵画と同質のイメージが立ち現れるような、時間芸術と空間芸術とが融合したような不思議な世界を、私たちは目の当たりにすることになるでしょう。
写真や映画がそうであったように、技術の革新は、それ以前には予想もされなかった新たなアートの領域を誘発してきました。本展の会場では、単に最先端の装置の性能を生かすというだけではなく、従来の映像の概念そのものをはるかに越えた発想による表現が、鋭い感受性に恵まれたアーティストたちの手で繰り広げられるに違いありません。
ビル・ヴィオラ 《プールの反映》 1977-79年
160×214cm SD、サウンド プロジェクション 7分
作家蔵 撮影:Kira Perov ©Bill Viola
ミロスワフ・バウカ 《BlueGasEyes》 2004年
2×(170×126×10cm) 鉄、塩、SD、サウンド プロジェクション2台 3分37秒
作家蔵 ©Miroslaw Balka, courtesy of Gladstone Gallery, NY
サム・テイラー=ウッド 《ピエタ》 2001年
35ミリ映画フィルム/SD プロジェクション 1分57秒
作家蔵 ©Sam Taylor-Wood, courtesy of White Cube
ジュリアン・オピー 《イヴニング・ドレスの女》 2005年
97×61×13cm 40インチ液晶ディスプレイ、コンピューター
国立国際美術館 ©Julian Opie and SCAI the Bathhouse, Tokyo
ブライアン・イーノ 《ミステイクン・メモリーズ・オヴ・ミディーヴァル・マンハッタン》
1980/81年 SD、サウンド 65インチ液晶ディスプレイ(縦型)2台 47分
作家蔵 ©Brian Eno
ドミニク・レイマン 《Yo Lo Vi》 2006年
180×180cm アクリル、カンヴァス、SD、遅延された監視カメラ
プロジェクション2台(DVD、監視カメラ+遅延装置) 25分
作家蔵(遅延装置:アトラス・シュトゥーキ)
©Dominik Lejman, courtesy of Luxe Gallery, NY
揚福東(ヤン・フードン) 《雀村往東》 2007年
HD/SD、6面、ビデオ・インスタレーション、サウンド
65インチ液晶ディスプレイ6台 各20分50秒
作家蔵 ©Yang Fudong, courtesy of the artist/Marian Goodman Gallery/Shanghart Gallery
小島千雪 《リズミカルム、砂の陸》 2007年
SD プロジェクション 11分32秒
作家蔵 音響:矢坂健司 ©Kojima Chiyuki
鷹野隆大 《電動ぱらぱら2002/2008》(上半身) 2002/2008年
35ミリ写真フィルム/HD/2面 65インチ液晶ディスプレイ2台 5-10分
作家蔵 ©Takano Ryudai, courtesy of Zeit-Foto Salon, Yumiko Chiba Associates
森村泰昌 《フェルメール研究(振り向く絵画)》 2008年
168.5×106.5cm 65インチ液晶ディスプレイ、HD/HD
65インチ液晶ディスプレイ(縦型) 4分12秒
作家蔵 撮影・編集:岸本康 衣装:CENTER EAST(ナカヒガシユウコ)
描画:小池勝行 制作協力:夫馬朗、大村邦男、吉田恵子
©Morimura Yasumasa, courtesy of MEM
イヴ・サスマン 《浮上するフェルガス》 2006年
HD/HD 65インチ液晶ディスプレイ 20分 作家蔵
©Eve Sussman/Rufus Corporation, courtesy of the artist/Roebling Hall, NY.
千住博 《水の森》 2008年
220×716×120cm(展示台含む) HD/HD、8面、サウンド
65インチ液晶ディスプレイ(縦型)8台 2分
作家蔵 ©enju Hiroshi
邱黯雄(チウ・アンション) 《新山海経・二》 2007年
SD、3面マルチ、サウンド プロジェクション3台、コンピューター 29分14秒
作家蔵 音楽:欧波 ©Qiu Anxiong
やなぎみわ 《Fortunetelling》 2005年
HD/HD 65インチ液晶ディスプレイ(縦型)3台 14分28秒
作家蔵 ©Yanagi Miwa
開館時間
午前10時−午後5時、金曜日は午後7時まで(入館は閉館の30分前まで)
休館日
毎週月曜日(ただし、5月5日(月・祝)は開館)
観覧料
当日:一般 900円/大学生 700円
前売:一般 700円/大学生 500円
団体:一般 700円/大学生 500円