The National Museum of Art, Osaka

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島敦彦国立国際美術館長  島 敦彦

 新型コロナウイルス感染症がこれで終息に向かうのかどうか、まだ予断を許さないところがありますが、日常生活が少しずつ戻り、国や地域を往来する人もかなり増えてきました。展覧会も、ほぼこれまでと同様に開かれ、来場者も徐々に回復し、各種イベントも人数の制限なく実施できるようになりました。
 パンデミックの副産物として始まったオンラインによる会議やシンポジウムにも慣れてきましたが、逆に、美術館で実物を目の当たりにする喜びや驚き、美術館に足を運んでこそ得られる臨場感など、かつてのあたりまえがいかに大切な場であったのかを再認識する契機にもなりました。
 一方、ウクライナでの戦争はもとより、世界各地の紛争や災害などによって、数多くの人々が苦しめられ、居場所が失われています。日本もこうした不穏な世界情勢と無関係ではいられません。ちなみに欧州での戦争は、作品輸送費や航空運賃の高騰を招くなど、美術館活動を遂行する上でさまざまな支障を生じさせています。

 さて2023年度は、昨年度2月4日から始まった「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」並びに同時開催のコレクション展「特集展示:メル・ボックナー」を、5月21日まで開催し、その後6月から夏にかけて「ホーム・スイート・ホーム」と題した特別展を開催します。同展は、竹村京、鎌田友介、アンドロ・ウェクア、マリア・ファーラなどの国内外の作家による、一様には定義づけられない「ホーム」を主題とした作品を紹介します。歴史、記憶、アイデンティティ、場所、家族のあり方など、さまざまな視点から、「ホーム」の諸相を見つめ直します。
 同時期のコレクション展「コレクション1 80/90/00/10」では、1980年代以降、現在に至る国内外の現代美術(村上隆、奈良美智、中原浩大、森村泰昌、マイク・ケリー、やなぎみわ、シンディー・シャーマンなど)をいくつかのテーマに分けてご紹介します。なかでも2022年度に収蔵した村上隆の代表作《727 FATMAN LITTLEBOY》(2017年)は、村上が1996年以来制作してきた「727」シリーズのうちの1点で、国内で所蔵される村上作品としては最大級のものとなります。また村上隆作品の収蔵は、国立国際美術館にとって初めてのことで、この機会に是非ご覧下さい。
 秋から年明け2月初旬までは、館内外の改修工事のために残念ながら休館します。その後、2月6日から「古代メキシコ-マヤ、アステカ、テオティワカン」を開催します。紀元前15世紀から後16世紀のスペイン侵攻まで、3千年以上にわたって繁栄したメキシコの古代文明のうち、3つの文明を中心に多彩な出土品約140点を紹介します。火山の噴火や地震、干ばつなど厳しい自然環境の中、人々は神を信仰し、時に畏怖しながら、独自の世界観と造形美を生み出しました。東京国立博物館、九州国立博物館からの巡回展です。

 美術館は、美術の関心層や大人のためだけではなく、将来を担う子供たちにとっても欠かせない場所でなければなりません。子供たちへの教育というよりも、子供たちとともにあり続けることで、美術館がより身近な存在となるのではないかと思っています。また障がいのある人やいろんな事情で美術館に足を運べない人たちにも広く開かれるべく、できることは何でも取り組んでいく所存です。今年度もご来場のほど、どうぞよろしくお願いします。

2023年5月

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