アクティヴィティ・パレット

かみのボーシ

提案者:東 明

美術作家・東明が考案した紙を使った帽子づくり工作です。
これまでいろんな場所で開催したワークショップの様子も交えつつ紹介していきます。

アトリエ・ログハウスでの様子

このアクティビティにまつわるストーリー

展覧会のチラシやポスターって余りがちですよね。私も自分の展覧会のチラシが家に貯まっていて、勿体無いなあ、と思っていました。これを使って何か作れないか? そんな時に大阪の箕面市にあるアトリエ・ログハウスからワークショップ講師の依頼がやって来ました。アトリエ・ログハウスは美術作家の松尾郁子さんが主宰されている絵画や工作のアトリエです。そこは、親子、子ども、大人と年齢や属性を越えた人たちが集い創作を楽しむ素敵な場所です。そこで実施する題材として紙を使った帽子づくりを思いつきました。私が身体性を伴った作品を作っていること、余ったチラシを活用したいこと、年齢に関係なく誰でも簡単に取り組めることを総合して導き出した題材です。因みに子どもって、動くもの、空を飛ぶもの、光るものが大好きですが、身に付けられるものも好きですよね。

材料と道具について

いろんな種類の紙

材料は“紙”。展覧会のチラシやポスターはもちろんのこと、色画用紙やコピー用紙、和紙やお花紙、雑誌の切り抜きなど紙ならなんでも。最初につくるヘッドギアのようなベースは色画用紙のような少し分厚い紙が良いですが、飾り付けはお花紙などなんでも大丈夫。薄めの段ボールを使っても面白いです。まずは自宅の中にどんな紙があるか集めてみましょう。

道具はホチキス、はさみ、セロハンテープ、鉛筆。ホチキスは紙を簡単に繋ぎ合わすことのできる魔法の道具ですが、紙が分厚いと刺さらないことがあります。針を床に落とさないよう注意も必要。機種は昔からあるようなアゴの深い一般的なものがおすすめです。セロハンテープは手軽で良いのですが、黄色っぽくなるのと紫外線に弱いことに注意。できあがった帽子は日光にさらされない場所に展示保管しましょう。重めのテープ台があると使いやすさがアップします。
※作り方はPDFのインストラクションに詳しく載せています。

テーマ

自由ですが、自由は不自由でもありますね。テーマが欲しいなあ、とういう方は下から選んでみてください。

    ●美術館にかぶって行きたい帽子

    美術館に行く時ってちょっとおしゃれしたいですよね。
    そんな時にかぶって行きたい帽子、どんなのかな。

    ●気持ちを上げられる帽子

    なんだかやる気が出てくる帽子、力をもらえる帽子、欲しいなあ。

    ●手の赴くままに

    まずは手の赴くままに紙を切ったりちぎったりしてパーツを作りましょう。
    そしてベースにどんどんくっつけていきながら、アドリブで作ろう!

手の冒険

手を動かして作業する様子

特に大人の方は絵を描いたり工作をすることに抵抗があるかもしれません。長年やっていないし、絵は苦手だし、などなど。何かしら恥ずかしいという思いが付きまとうようです。しかし、一度手を動かして作り出すと思いの他作業が進むものです。子どもが知らないことにチャレンジするのと同じです。以前関わったワークショップの際、お孫さんに付き添って来られた年輩のご夫婦に一緒につくることを勧めたところ、最初は恥ずかしがって避けておられたのですが、思い切って制作を始められました。すると、お孫さんよりも没頭してしまい時間制限も越えて楽しんでおられました。工作は手を使った冒険のようなものなのです。

頭の上の彫刻

帽子工作ワークショップでの作品1

帽子って“頭の上の彫刻”と捉えることもできますね。上の画像は2019年に神戸のKOBE STUDIO Y3で開催したワークショップ「あたまのうえのチョーコク」(C.A.P.主催)に参加してくれた小学生の男の子の作品。ルソーのチラシからインスパイアされたのか? 頭の上に木が何本も生えました。帽子工作でつくる作品は自分にピッタリの自分専用の帽子です。是非自分らしさを頭の上に表現してみてください。

思い思いの帽子たち

これまでの帽子工作ワークショップで生まれた作品たちを紹介します。

帽子工作ワークショップでの作品2 帽子工作ワークショップでの作品3 帽子工作ワークショップでの作品4 帽子工作ワークショップでの作品5

2019年3月に国立国際美術館で開催したワークショップ「美術館をかぶろう:美術館のきおくの帽子」では、同館で開催されていた「クリスチャン・ボルタンスキー − Lifetime」展に関わることができました。参加者がタブレットを活用して展覧会の撮影可能コーナーや美術館内、その周辺で気に入った場所を見つけて撮影し、デザイナーの方の協力のもと会場でプリントアウト、その写真を素材にして工作を行います。他の参加者が撮影した写真を使うこともできます。美術館の記憶を頭にかぶって持ち帰ってもらうというねらい。国立国際美術館の学芸員の方とのコラボ企画でした。

帽子工作ワークショップでの作品6 帽子工作ワークショップでの作品7 帽子工作ワークショップでの作品8 帽子工作ワークショップでの作品9

その他にも箕面のアトリエ・ログハウス、大阪・堂島の遊糸洞、京都府にある支援学校など様々な場所で開催し、参加者の方たちが思い思いの帽子を生み出してくれました。支援学校の活動では、ベースと丸い形や短冊状の色画用紙を予めこちらで準備し、身体に障がいのある子どもでも気軽に活動できるよう工夫しました。何をどこに付けるか、それを考えるだけでも創作は可能です。

他の人の作品も見てみたいな

素敵な帽子ができあがったら是非インスタグラムに #かみのボーシ を付けて投稿してください。#かみのボーシ のフォローもお願いします!

東明

東 明(美術作家)

1974年 広島県生まれ
1998年 京都市立芸術大学美術学部彫刻専攻卒業
膨らむ服の作品“パラフーク”など、鑑賞者が直接関わることで初めて成立する作品を制作する。京都市の小学校での滞在制作やケニアの市民と関わるプロジェクトなど多方面で活動。その他に作品のアイデアを活かした遊具の企画・製造も行う。近年の主な展覧会に、「てんとうむしプロジェクト05 NEW HOME」(グループ展、京都芸術センター、2014年)、「水あそび博覧会」(グループ展、越後妻有里山現代美術館キナーレ、2019年)、「国立国際美術館ワークショップ 美術を着よう 美術館をかぶろう」(ワークショップ、国立国際美術館、2019年)ほか。
(2021/1/22 時点)

今回のアクティヴィティを提案したおもい

自宅にいる時間がずいぶんと増えている現況、自宅の中や周辺の手の届く範囲の持つポテンシャルを再確認する良い機会です。それは“あなた”、“わたし”の中に眠っている能力を目覚めさせる機会でもあります。今回は、どんな家にも必ずある“紙”を使い、手を使ってものをつくる(作る・創る)活動を提案します。ワークショップの重要な要素である、他者のアイデアや意見をその場で共有する、ということが難しくなりますが、それを補完する手立てを考え試すことで、今後のワークショップや芸術の在り方を探求する絶好の機会でもあります。 

今実践していること

私は、“パラフーク”という着用して遊ぶことのできる服のような作品をつくり、イベント形式で発表してきました。しかし、不特定多数が極めて密になって遊ぶ活動であることから今は開催が難しい状況です。そこで“パラフーク”のレンタルを始めることにしました。“パラフーク”は30分ほど着用していると体が拡張したようなフワッとした不思議な身体感覚を味わえます。時間制限の無い自宅だからこそできる作品体験があるはずなのです。状況に合わせた作家活動の在り方を模索しています。
※作品レンタルに興味を持たれたら akirahigashi.com を見てください!

今大切にしていること

自分を形づくっているものはある程度のしなやかさは持っているのだろうけれど、方向を変えようとしてもジワーっと元に戻ってしまいます。しかし少しずつ少しずつ角度を変えていくことができるはず。竹という素材は弾力性がありますが熱をかけると曲げることができます。自分の方向を変える際に必要になる“熱”とは何なのか? それを知ること。