第17回中之島映像劇場 回想の岩佐寿弥
岩佐寿弥は、フィクションとドキュメンタリーの境界を自在に踏み越える作品を遺した、異端の映画作家です。
岩波映画製作所にいた時代から「青の会」のメンバーとしてともに歩んだ土本典昭や小川紳介らが、やがて社会問題や苛烈な闘争の現場に身を置き、革新的なドキュメンタリーを生み出していったのに対して、岩佐の映画では「シネマ・ヴェリテ」と呼ばれる手法が活用され、日常の中にある虚実の皮膜を見つめ直していくことが選ばれます。1969年に公開された《ねじ式映画 私は女優?》に始まり、「叛軍」シリーズ(1970-1972年)や《眠れ蜜》(1976年)で、岩佐は、役者や登場人物たちに「演じるということ」の根本を問い直させる映画を製作し続けていき、仲間たちと上映運動を各地で展開しました。
本上映会では、上に挙げた1960年代末から70年代に発表された監督作品を中心に取り上げ、近年発掘された「叛軍」シリーズのNo.1〜No.3(1970-1971年)も上映します。そして、チベットからの難民の少年にカメラを向けた晩年の傑作《オロ》(2012年)もあわせて上映することで、特に関西で回顧される機会が少なかった岩佐の映画の軌跡を辿ります。
また今回は映画の上映だけでなく、「叛軍」シリーズの発見にも関わられた、国立映画アーカイブ主任研究員の岡田秀則氏による特別講演も開催いたします。さらに本配布資料には、ドキュメンタリー映画の研究者や映画作家、プロデューサーの方々に、それぞれの立場で岩佐監督とその映画をどのように受け止めてきたかを辿り、考察していただきました。いまだ議論の俎上に載せられる機会の少ない岩佐映画を検討し、新しい可能性を引き出すための一歩として受けとめていただければと思います。
- 主催
- 国立国際美術館、国立映画アーカイブ
- 特別協賛
- 木下グループ
- 協賛
- 公益財団法人ダイキン工業現代美術振興財団
- 開催日
- 2019年3月23日(土)、24日(日)
Aプログラム
- 《ねじ式映画 私は女優?》(1969年)
特別講演「岩佐寿弥―ドキュメンタリーの彼岸を見た人 「叛軍」シリーズを中心に」
講師:岡田秀則(国立映画アーカイブ主任研究員)
Bプログラム
- 《叛軍 No.1》(1970年)
- 《叛軍 No.2》(1970年)
- 《叛軍 No.3》(1971年)
- 《叛軍 No.4》(1972年)
Cプログラム
- 《眠れ蜜》(1976年)
D プログラム
- 《オロ》(2012年)