アクティヴィティ・パレット

どうしてこれはこの大きさ??

提案者:宮元三恵

今、この記事を読んでいるあなたの周りには何がありますか?
座っている椅子、机の上のマグカップや読みかけの本、ペンやノートなどなど・・・
それらはどのくらいの大きさですか?
定規を出した人、ちょっと待ってください。
今日は定規を使わずに身の周りのものの大きさについて少し考えてみましょう。

1)準備:自分の大きさを知る

まずは自分の手の大きさを測ろう!

定規がなかった時代、私たちの先祖は手や足など体の一部を使って、ものの大きさを測っていました。そこで私たちもまず、自分の手の大きさを測ることから始めてみましょう。

2)行動:自分の手で測ってみよう

色々なものの大きさを測ってみよう!

自分の手の大きさがわかったら、身の周りにある色々なものの大きさを手で測ってみましょう。グラスやお茶碗などの食べる道具、消しゴムや鉛筆などの勉強道具、他にもスマートフォンやドアノブ、引き出しの取手や水道の蛇口、大好きなゲーム機のコントローラーなど、できるだけ色んなものの大きさを手で測って記録しましょう。
平べったいものは親指と人差し指を広げたり、丸いものは指で輪っかをつくったり、他にも手よりも大きなものは手のひら何個分なのか考えたり、手よりも小さなものは指の幅や長さなど、測るものに合わせて測り方も工夫しましょう。

3)分析:測ったものを比べてみよう

大きさ以外に持ち方など、何か共通点はないかな?

測り終わったら同じ大きさだったものがないか記録を見返してみましょう。同じ大きさのものを見つけられた人は、それらを使う時の手の動作(手で握るのか、指で掴むのか、掌にのせるのかなど)に共通点がないかを探してみましょう。同じ大きさが見つからなかった人も大丈夫です。選んだものと似たような手の動作で使うものを探してもう一度測ってみましょう。きっと同じような大きさのものが見つかるはずです。
大きさだけでなく、ものについているボタンやスイッチ、穴や取手などがどうしてその位置にあるのか、持った時の重さや軽さ、ツルツルした触り心地や表面のでこぼこした形はなんのためなのか、ものと手の関係や手から感じ取れるものの特性を考えることも面白いと思います。

4)発展:体と建物の関係を考えてみよう

空間や建物の大きさについても考えてみよう!

ものから身の周りの建物に少し視点を広げてみましょう。
建物は私たち人間が快適に過ごすための器です。
私たちは家や学校、仕事場など色々な建物で生活していますが、それらの大きさも人間の大きさや動作と深く関わっています。広すぎては落ち着かない空間になりますし、狭すぎると窮屈な空間になります。空間やそこに置かれている家具も使う目的に応じて形や大きさが変化します。
低すぎるテーブルは勉強しづらいですし、足を伸ばせないベッドはゆっくり休めません。伸ばした手がくっついてしまう天井は不便ですが、高すぎる天井についた照明の電球は交換が大変です。もっというと空間の用途は必ずしも一つではありません。例えばトイレなら座って用を足すことに加え、トイレットペーパーを替えたり、床を掃除したり、いくつかの動作ができる必要があります。また、一人で使う空間ばかりでなく、親子で並んで使えるキッチンなど複数の人の大きさや動作とも関係があります。

今、私たちはものの大きさを測る時、メートルを単位として使っています。でも、使い慣れた定規ではなく、手足など体を使って測ってみると、普段の何気ない生活に新しい発見が見つかるのではないかと思います。
今回は手で測ることで、ものとそれを使う私たちとの関係を考えましたが、建物や空間の場合は、足や広げた両手の大きさなど、体全体を使った測り方のほうがしっくりくるかもしれません。何より、一度自分の手足の大きさを測って知っておけば、これから先は定規を持っていなくても大丈夫です。指で測ったり、手で測ったり、足で測ったり、自分の体を道具にして、身の周りのものや空間、建物の大きさがわかるようになれますし、そうして測ってみることを通して、「もっとこうだったらいいのに!」が見つけられると更にラッキーです。そのアイディアをスケッチなどの形にしてみてください!なんだかワクワクしてきませんか?

宮元三恵

宮元三恵(アーティスト)

福岡県生まれ。1996年、アーキテクチュラル・アソシエーション・スクール(ロンドン)修了。2006年、東京藝術大学大学院美術研究科後期博士課程修了。子どもの身体感覚に基づくワークショップや動物の巣をモチーフにした空間制作など、空間の知覚や体験をテーマとする活動を国内外で展開している。東京工科大学デザイン学部・大学院デザイン研究科教授。
(2023/3/20 時点)

今回のアクティヴィティを提案したおもい

国立国際美術館という建物を考えるワークショップを通じて、普段は展示されている絵や彫刻などの作品を目当てに訪れることの多い、美術館という建物について改めて考える機会がありました。私たちは、日々色々なものや空間、建物に囲まれて生活していますが、普段の生活の中でそれらをわざわざ意識する場面はそう多くないと思います。いちいち意識しなければならないとしたらそれは不便ですし、だからこそつくる人は、私たちが快適に使えるように考えてつくってくれているのだと思います。
クリエイティブの第一歩は、観察することから始まります。私たちの体の大きさや動作との関係から、何気なく使っているものや過ごしている空間、建物を観察することで、今まで見過ごしていた新しい気づきを発見してもらえると嬉しいです。また、手足など体を使って測る以外にも私たちは五感を通して、香りや音、触り心地などを感じることもできます。ぜひ自分の体や五感をフル活用して、身の周りのものや空間、建物を全身で味わってみてください。

今実践していること

移動の際はできるだけ歩いています。通りすがりの庭先に季節の移り変わりを感じたり、学校帰りの子どもたちの会話が聞こえたり、はたまたそんな余裕もないくらい考え事に囚われている自分に気付いたり、今日はクタクタになってつい電車に乗ってしまったり、歩くことが自分の状態を振り返る手掛かりにもなりますし、とにかく1日の終わりによく眠れます。今住んでいる東京から大阪の国立国際美術館まで歩いて行ったら、道中どんな出会いがあるのかなと考え、いつか実行したいと考えています!

今大切にしていること

今日やろうと思ったことは、今日のうちに少し手をつけるようにしています。